このページの要点
① 旧耐震(1980年以前に建った)住宅は8万300戸、全体の10.6%。この比率は政令指定都市20市で最も低い——つまり川崎の住宅ストックは20市でいちばん新しい、ということです。
② 20年で旧耐震住宅は13万4,530戸から8万300戸へ、40.3%減りました。比率も25.1%から10.6%へ。建て替えと新築が同時に進んだ結果です。
③ ただし区によって差があります。もっとも高い宮前区は17.4%、もっとも低い中原区は6.4%。2.7倍の開きです。
いつ建った住宅が、どれだけあるか
建築年次別の住宅数(2023年・川崎市)
居住世帯のある住宅75万7,600戸の内訳/赤系が旧耐震(1980年以前)
2001年以降に建った住宅は合わせて35万7,000戸、全体の47.1%。川崎の住宅の半分近くは21世紀に建ちました。
赤系の2本が旧耐震です。1970年以前が2万600戸、1971〜1980年が5万9,700戸。合わせて8万300戸で全体の10.6%にあたります。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成
旧耐震住宅は20年でどう減ったか(2003年〜2023年)
棒が旧耐震住宅の戸数、折れ線が住宅全体に占める割合
いっぽう住宅全体は53万6,520戸から75万7,600戸へ22万1,080戸増えました。
古い住宅が減り、新しい住宅が増えた。この2つが同時に起きたため、旧耐震比率は25.1%から10.6%へ14.5ポイント下がりました。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:住宅・土地統計調査)をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
旧耐震住宅の割合(2023年)
1980年以前に建った住宅 ÷ 居住世帯のある住宅/川崎市を濃い色で表示
いちばん高いのは堺市の24.8%。次いで北九州市23.4%、千葉市21.7%。川崎市は堺市の半分以下です。
下位(=新しい)に並ぶのは札幌市12.1%、さいたま市12.2%、仙台市13.5%、福岡市13.8%。人口が伸びている都市ほど住宅が新しいという、わかりやすい関係が見えます。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成
7区でどう違うか
区別の旧耐震住宅(2023年)
棒が旧耐震住宅の戸数、菱形がその区の住宅に占める割合
もっとも低いのは中原区の6.4%(8,690戸)。武蔵小杉のタワーマンション群で新しい住宅が大量に供給されたためです。
宮前区17.4%と中原区6.4%では2.7倍の差。宮前区は1970年代から80年代にかけて開発された住宅地が多く、その世代の戸建てが更新期を迎えつつあります。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成
区別の建築年次の構成(2023年)
それぞれの区の住宅を100%としたときの内訳
中原区は右側(新しい年代)の色が厚い。宮前区は左側(古い年代)の色が厚い。「7区データ図鑑」で見たとおり、宮前区は持ち家率が7区で最も高い区です。持ち家が多い=住み続ける=住宅が古くなるという関係がここに表れています。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成
解説:新しい街の、古い部分
なぜ1980年で区切るのか
1981年6月、建築基準法の耐震基準が大きく変わりました。それ以前の基準を「旧耐震」、以後を「新耐震」と呼びます。
旧耐震は「震度5強程度の地震で倒壊しないこと」を目安にしていました。新耐震は「震度6強〜7でも倒壊しないこと」。1995年の阪神・淡路大震災では、この基準の前後で被害に明確な差が出ました。
そのため1980年以前に建った住宅がどれだけ残っているかは、その街の地震への備えを測る代表的な指標になっています。
川崎は20市でいちばん新しい
2023年10月時点で、川崎市には居住世帯のある住宅が75万7,600戸あります。うち1980年以前に建ったものは8万300戸、10.6%。
この10.6%は政令指定都市20市で最も低い数字です。堺市24.8%、北九州市23.4%、千葉市21.7%——上位とは2倍以上の開きがあります。
理由ははっきりしています。「人口の推移」のページで見たとおり、川崎市の人口は1980年の104万人から2020年の154万人へ、40年で50万人増えました。人が増え続ければ、住宅も建ち続ける。結果として住宅ストック全体が若返ります。
下位(=新しい)に並ぶのが札幌市、さいたま市、仙台市、福岡市——いずれも人口が伸びてきた都市であることも、この見方を裏づけます。
20年で4割減った
旧耐震住宅そのものも減っています。2003年の13万4,530戸から2023年の8万300戸へ、5万4,230戸、40.3%の減少です。
同じ20年で住宅全体は53万6,520戸から75万7,600戸へ、22万1,080戸増えました。古いものが減り、新しいものが増える。この2つが同時に進んだため、旧耐震比率は25.1%から10.6%へ14.5ポイント下がりました。
年に約2,700戸のペースで旧耐震住宅が姿を消してきた計算になります。建て替え、取り壊し、マンションへの集約——川崎では住宅の更新が着実に進んでいるといえます。
宮前区17.4%、中原区6.4%
ただし市内は一様ではありません。旧耐震比率がもっとも高いのは宮前区の17.4%(1万8,140戸)。もっとも低いのは中原区の6.4%(8,690戸)。2.7倍の差があります。
中原区が低い理由は明快です。武蔵小杉のタワーマンション群。「7区別 人口と人口密度」のページで見たとおり、中原区は市内で最も人口が増えた区で、その増加分がそのまま新しい住宅です。
いっぽう宮前区は、1970年代から80年代にかけて東急田園都市線の沿線として開発された住宅地が中心です。当時建った戸建てが、いま築45〜55年を迎えています。
「7区データ図鑑」で見たとおり、宮前区は持ち家率が7区でもっとも高い区でもあります。持ち家が多い区は、住み続ける人が多く、そのぶん住宅も古くなる。幸区11.7%、麻生区11.6%が続くのも、同じ理屈で説明できます。
8万300戸という数字は、川崎市の住宅の10戸に1戸。市全体で見れば少なくても、宮前区に住む人にとっては6戸に1戸です。平均だけを見ていると、この違いは見えません。
中小企業への示唆
1. リフォーム・耐震改修の市場は北部にある——宮前区1万8,140戸、多摩区1万2,360戸、川崎区1万2,470戸。旧耐震住宅の戸数で見ると、比率と順位が変わります。比率が高いのは宮前区、戸数が多いのは宮前区・川崎区・多摩区。営業エリアを決めるときは両方を見るべきです。
2. 1991〜2000年築の15万1,100戸が次の更新期——築25〜35年。給湯器、外壁、屋根、水回り。耐震ではなく設備更新の需要がこの層に集中します。市内最大のボリュームゾーンです。
3. 建て替え相談は「持ち家が多い区」から——宮前区、麻生区。持ち家・戸建て・築古が重なるエリアです。相続と絡む案件も増えます。
4. 中原区で築古住宅を探す商売は成り立ちにくい——6.4%。同じ市内でも、リフォーム需要の密度がまったく違います。
データの注意点
住宅・土地統計調査は標本調査です。全数調査ではないため、結果は100戸単位に丸められています。そのため7区の合計と市の値がわずかにずれます(2023年で50〜80戸程度)。
2023年の建築年次には「不詳」が4万6,800戸(6.2%)あります。このページの旧耐震比率は不詳を含む住宅総数を分母にしているため、実際の旧耐震比率はこれよりやや高い可能性があります。年次がわかる住宅(71万800戸)だけで計算すると11.3%になります。
「旧耐震」は建築時期による区分であり、実際の耐震性能を測ったものではありません。1980年以前の住宅でも耐震改修を済ませたものは多数あります。2023年調査では、2019年以降に耐震改修工事をした持ち家が市内に4,700戸ありました。
対象は居住世帯のある住宅です。空き家は含みません。空き家については「空き家率と住宅ストック」のページをご覧ください。