川崎市の平均寿命

同じ市内で、男性の寿命が5.2年違います。

このページの要点

① 区によって5.2年の差。男性の平均寿命は麻生区84.00歳に対し、川崎区78.80歳。同じ市内で5.2年の開きがあります。

② 10年で男性は1.78年延びた。市全体では2010年の79.92歳から2020年の81.70歳へ。女性も86.70歳から88.20歳へ1.50年延びています。

③ 医師は少ないのに、寿命は長い。人口10万人あたり医師数247.7人は政令市20市で17位。ところが平均寿命は男性10位、女性4位です。

10年間の推移

平均寿命の推移(2010年・2015年・2020年)

市区町村別生命表による0歳の平均余命

読み方:男性は79.92歳→81.10歳→81.70歳、女性は86.70歳→87.60歳→88.20歳。どちらも一貫して延びています。
男女差は6.78年(2010年)から6.50年(2020年)へわずかに縮まりました。それでも女性が6年半長生きという構図は変わりません。
「出生・死亡(自然増減)」のページで見たとおり、川崎市は2021年に自然減へ転じました。寿命が延びても、それを上回るペースで出生が減っているということです。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」(市区町村別生命表)をもとに作成

区によって5年違う

区別の平均寿命(2020年)

男性の長い順/点線は市平均

読み方:男性でもっとも長いのは麻生区の84.00歳、もっとも短いのは川崎区の78.80歳。その差は5.2年です。
女性も麻生区89.20歳、川崎区87.00歳で2.2年の差。男性のほうが区による差が大きいのが特徴です。
市平均(男性81.70歳)を上回るのは麻生・宮前・中原・多摩・高津の5区。下回るのは幸区と川崎区です。北部ほど長く、南部ほど短いという、きれいな地理的な傾向が出ています。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成

男女差の大きさ

女性の平均寿命 − 男性の平均寿命(年)

読み方:男女差がもっとも大きいのは川崎区の8.20年。もっとも小さいのは麻生区の5.20年です。
男性の寿命が短い区ほど、男女差が大きくなっています。区による差は、主に男性側で生じているということです。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成

政令指定都市20市のなかで

平均寿命ランキング(男性・2020年)

川崎市を濃い色で表示

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成

人口10万人あたり医師数(2022年)

川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は247.7人で20市中17位。1位の京都市(460.1人)の54%にすぎません。
上位は京都市、熊本市、岡山市——いずれも大学医学部と大学病院を抱える都市です。医師数は医療需要というより、医育機関の立地に大きく左右されます。
川崎市には医科大学がなく、隣接する東京・横浜の大規模病院に依存する面があります。ただしそれでも平均寿命は男性10位・女性4位。医師の密度と寿命は、単純には結びつきません。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」(医師・歯科医師・薬剤師統計)をもとに作成

医療従事者は増えている

医師・歯科医師・薬剤師の推移

単位は人

読み方:医師は1984年の1,907人から2022年の3,811人へ2.0倍。薬剤師は2000年の2,137人から3,742人へ1.8倍になりました。
人口10万人あたりで見ると、1990年の187.4人から2020年の248.7人へ33%増。人口が増えるペースを上回って医師が増えています。
それでも政令市では17位。絶対数は増えているが、他都市との差は埋まっていないという状態です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成

解説:5.2年をどう読むか

同じ市内で5.2年

2020年の川崎市の平均寿命は男性81.70歳、女性88.20歳。全国平均(男性81.49歳、女性87.60歳)をわずかに上回る水準です。

ところが区別に見ると、話が変わります。男性は麻生区の84.00歳から川崎区の78.80歳まで、5.2年の開きがあります。女性も麻生区89.20歳、川崎区87.00歳で2.2年の差。

5.2年という差は小さくありません。国際比較でいえば、日本とチェコやポーランドくらいの差にあたります。それが同じ市の中で、電車で30分の距離のあいだに生じています。

北部が長く、南部が短い

順位を見ると、きれいな地理的傾向が出ます。長いほうから麻生区、宮前区、中原区・多摩区、高津区——そして幸区、川崎区。北部から南部へ向かって短くなります。

この並びは、このサイトの他のページで見た区の性格と対応します。

「7区データ図鑑」のページで見たとおり、麻生区は持ち家率61.8%が7区最高、1世帯あたり人員2.28人も最高。戸建て中心の落ち着いた住宅地です。いっぽう川崎区は1世帯1.89人で最少、外国人比率5.64%で最高、完全失業率3.74%も最高——多様な背景を持つ人が集まる区です。

平均寿命の差の背景には、所得、雇用の安定性、住環境、生活習慣、医療へのアクセスといった要因が複合的に関わると考えられます。ただしこのデータだけで因果関係を特定することはできません。相関があるという以上のことは言えない点にご注意ください。

男性側で差が生じている

興味深いのは、区による差が主に男性側で生じていることです。

男性の区間差は5.2年、女性は2.2年。男女差で見ると、川崎区が8.20年ともっとも大きく、麻生区は5.20年ともっとも小さい。男性の寿命が短い区ほど、男女差が大きくなるという関係です。

一般に男性のほうが、職業、飲酒、喫煙、健診受診率といった要因で地域差が出やすいと言われます。この統計もその傾向を裏づけています。

医師が少ないのに、寿命は長い

もうひとつ注目したいのが、医師数と寿命の関係です。

川崎市の人口10万人あたり医師数は247.7人(2022年)で、政令指定都市20市の17位。1位の京都市(460.1人)の54%にすぎません。上位は京都市、熊本市、岡山市——いずれも大学医学部と大学病院を抱える都市です。

ところが平均寿命は男性10位、女性は4位。医師が少ないのに寿命は上位という結果になっています。

これは「医師が多いほど長生きする」という単純な関係が成り立たないことを示しています。医師数は医療需要というより医育機関の立地に大きく左右されます。また川崎市は東京・横浜の大規模病院に電車で短時間でアクセスできる立地にあり、市内の医師数だけでは医療へのアクセスを測れません。

寿命を決めるのは医師の数より、所得水準、生活習慣、住環境といった要因のほうが大きい——「政令指定都市20市 データ比較」で見た所得20市2位、「市民の最終学歴」で見た大卒率20市1位という川崎市の姿は、そちらの説明に整合します。

中小企業への示唆

1. 健康関連サービスの需要は南部に——平均寿命が短い川崎区・幸区は、健康課題を抱える層が相対的に多いエリアといえます。健診、フィットネス、食事、禁煙支援——予防的なサービスの需要が見込まれます。

2. 従業員の健康管理は経営課題——男性の寿命に5.2年の地域差があるということは、働き手の健康状態にも差があるということです。「就業者数・失業率・女性就業」のページで見たとおり、川崎市の失業率は20市最低で採用は困難。採れた人材に長く働いてもらうという観点で、健康経営の投資対効果は高くなります。

3. 医療は市外へ流出している——医師数17位という数字は、高度医療で市外に頼る構造を示唆します。「通勤・通学の流動」で見た通勤や、「卸売・小売業の年間商品販売額」で見た買い物と同じく、医療でも市外流出が起きている可能性があります。

4. シニア市場は北部から——麻生区は平均寿命が最も長く、「7区データ図鑑」で見たとおり高齢化率24.1%も7区最高。健康なシニアが多い区です。旅行、趣味、学び直し、住み替え——この層向けのサービスは、麻生区・宮前区が有望です。

データの注意点

平均寿命は市区町村別生命表による0歳の平均余命です。収録は2010年・2015年・2020年の3時点のみで、5年ごとに公表されます。

市区町村別生命表は人口規模の小さい地域では変動が大きくなりますが、川崎市の各区はいずれも17万人以上あるため、比較的安定した数値といえます。

平均寿命は「その年の死亡状況が続いた場合に0歳児が生きられる年数」であり、いま高齢の人が何歳まで生きるかを示すものではありません。また区間の差は相関を示すもので、因果関係を証明するものではありません。

健康寿命(介護を必要としない期間)は、このデータベースには収録されていないため扱っていません。

医師数は従業地ベース(市内の医療機関に勤務する医師)です。市民が受診する医療機関が市内とは限らない点にご留意ください。