このページの要点
① 人口10万人あたり医師数は244.1人で、20市中19位。下はさいたま市(208.2人)だけ。1位の京都市(470.3人)とは倍近い差があります。
② 病院は減り、診療所は増えた。病院は2000年の43施設から2023年の39施設へ。いっぽう一般診療所は1980年の643施設から1,060施設へ、40年で1.6倍になりました。
③ 医師数そのものは倍増している。1984年の1,907人から2022年の3,811人へ2.0倍。ただし同じ期間に人口も38万人増えたため、人口比では追いついていません。
医療機関の数はどう変わったか
病院数と一般診療所数の推移
病院=20床以上/一般診療所=19床以下または無床
病院(赤)は緩やかな減少傾向。2000年の43施設から2023年は39施設です。全国的に中小病院の統廃合が進んだ流れと重なります。
一般診療所(青)は1980年の643施設から2023年の1,060施設へ、一貫した増加。入院機能は集約され、外来はきめ細かく分散する——医療提供体制の全国的な変化が、川崎でもそのまま起きています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」(医療施設調査)をもとに作成
医師数と歯科医師数の推移
単位は人/3年ごとの調査
数だけを見れば順調に増えています。問題は、同じ期間に川崎市の人口も約38万人増えたことです。人口10万人あたりでみると、この伸びは十分ではありませんでした。
出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」(医師・歯科医師・薬剤師統計)をもとに作成
病床数の推移
病院の病床数と一般診療所の病床数
いっぽう一般診療所の病床は576床から228床へ6割減。診療所が入院機能を手放し、外来に特化していった動きがはっきり出ています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
人口10万人あたり医師数(2022年)
医師数 ÷ 人口 × 10万/川崎市を濃い色で表示
上位に並ぶのは京都市、熊本市、岡山市、北九州市、福岡市——いずれも医科大学・大学病院を抱える都市です。医師数は医育機関の有無に強く左右されます。
下位は川崎市、さいたま市、横浜市(244.4人)、相模原市(251.4人)、堺市(255.8人)。大都市に隣接するベッドタウン型の都市が並びます。医療も、買い物や通勤と同じく「隣の大都市に依存する」構造になっています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」/「令和7年国勢調査 速報集計」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の一般診療所数(最新年)
単位は施設
グラフの上にカーソルを合わせると、人口1万人あたりの診療所数が表示されます。
出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成
解説:隣に頼る医療
医師は倍増したが、足りていない
川崎市の医師数は1984年の1,907人から2022年の3,811人へ、38年で2.0倍になりました。数字だけを見れば大きな改善です。
ところが人口10万人あたりに直すと244.1人で、政令指定都市20市の19位。下にはさいたま市しかいません。理由は単純で、同じ期間に人口も約38万人増えたからです。医師の増加が人口の増加に追いつかなかった、ということになります。
この指標の上位は京都市(470.3人)、熊本市(455.1人)、岡山市(454.4人)。いずれも医科大学と大学病院を抱える都市です。医師は医育機関の周辺に集まるため、この差は都市の努力というより構造的な条件によります。川崎市には医学部がありません。
ベッドタウンは医療も外部依存
下位5市を見ると、さいたま市(20位)、川崎市(19位)、横浜市(18位)、相模原市(17位)、堺市(16位)。すべて大都市に隣接するベッドタウン型の都市です。
これは偶然ではありません。このサイトの他のページで見てきた構造と同じです。「通勤・通学の流動」では市民の4割が他県で働き、「卸売・小売業の年間商品販売額」では1人あたり小売販売額が20市最下位でした。働く場所も、買い物も、そして高度医療も、隣の大都市に依存する——それがベッドタウンという都市の形です。
ただし誤解のないように書いておくと、これは「医療が受けられない」という意味ではありません。東京都心や横浜まで30分以内という立地は、緊急時を除けば十分に機能します。数字が示しているのは、市内で完結しないということです。
病院は減り、診療所は増えた
施設の内訳を見ると、もうひとつの変化が見えます。病院(20床以上)は2000年の43施設から2023年の39施設へ減少。いっぽう一般診療所(19床以下または無床)は1980年の643施設から2023年の1,060施設へ、40年で1.6倍に増えました。
病床数の動きも同じ方向です。一般診療所の病床は576床(2000年)から228床(2023年)へ6割減りました。診療所が入院機能を手放し、外来専門になっていったということです。
これは全国共通の流れです。入院は大きな病院に集約し、日常の診療は身近な診療所が担う——医療提供体制の役割分担が進んだ結果で、川崎に限った話ではありません。
中小企業への示唆
1. 診療所は1,000施設超の市場——一般診療所1,060、歯科診療所743。あわせて1,800を超える事業所があります。医療機器、消耗品、電子カルテ、レセプト、清掃、医療廃棄物、人材紹介——BtoBの取引先として、これは無視できない規模です。「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、医療・福祉は市内で従業者数2位(8万5,460人)の産業です。
2. 開業支援の需要がある——診療所が増え続けているということは、開業する医師が毎年いるということです。「開業率・廃業率」のページでも、医療・福祉は5年間で609事業所の純増と全業種でトップでした。物件、内装、機器リース、税務、労務——開業に伴う需要は継続的に発生します。
3. 高齢化はこれから効いてくる——川崎市の高齢化率20.2%は20市で最も低い水準ですが、「人口ピラミッド」で見たとおり最多年齢層は45〜49歳です。この層が20年後に65歳を超えると、医療需要は一気に増えます。医師数が20市で19位という現状は、そのときに効いてくる課題です。
データの注意点
医師数は医師・歯科医師・薬剤師統計(3年ごと)による従業地ベースの数値です。川崎市の医療機関等で働く医師の数であり、市内に住む医師の数ではありません。
人口10万人あたりの計算には2025年の人口を使っています。医師数は2022年の値なので、年次にずれがあります。都市どうしの比較には使えますが、絶対値としては目安としてお読みください。
病院・診療所の数は医療施設調査によるもので、指標によって調査年が異なります。グラフではデータのある年のみを表示しています。