川崎市の人口10万人あたり医師数

医師の数は40年で倍増。それでも政令市では下から2番目です。

このページの要点

① 人口10万人あたり244.1人は、政令市20市で19位。1位の京都市(470.3人)の約半分です。最下位はさいたま市(208.2人)。

② 医師数そのものは倍増している。1984年の1,907人から2022年の3,811人へ。40年弱で2.0倍になりました。減っているわけではありません。

③ 理由は「人口も増えたから」。同じ期間に人口も大きく増えたため、1人あたりで見ると順位が上がりません。加えて医学部を持たないことが、政令市のなかでの位置を決めています。

政令指定都市20市のなかで

人口10万人あたり医師数(政令指定都市20市)

医師数 ÷ 2025年の人口 × 10万/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は244.1人で19位。上位は京都市(470.3人)、熊本市(455.1人)、岡山市(454.4人)と続きます。
上位に並ぶのは、いずれも医学部と大学病院を持つ都市です。医学部があれば教員・研修医・関連病院の医師が集まり、人口あたりの医師数を押し上げます。
川崎市には医学部がありません。同じ理由で、さいたま市(20位)、相模原市、堺市といった大都市に隣接する市が下位に並びます。「卸売・小売業の年間商品販売額」で見た小売販売額の構図と、まったく同じパターンです。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」(医師・歯科医師・薬剤師統計)/「令和7年国勢調査 速報集計」をもとに作成

医師の数は増えている

医師数の推移(1984年〜2022年)

単位は人/2年ごとの調査

読み方:1984年の1,907人から2022年の3,811人へ、38年で2.0倍になりました。一度も大きく減ることなく、着実に増えています。
それでも人口10万人あたりで見ると順位が上がらないのは、同じ期間に川崎市の人口も大きく増えたためです。医師も増えたが、人も増えた——それがこのページの構図です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」をもとに作成

医師数と人口10万人あたり医師数

棒が医師数(左軸・人)、折れ線が人口10万人あたり(右軸・人)

読み方:医師数(棒)は右肩上がりですが、人口10万人あたり(折れ線)の伸びはゆるやかです。人口の増加が、医師の増加をかなりの部分打ち消しています。
それでも1人あたりでも改善はしています。医療へのアクセスが悪化してきたわけではありません。

出典:総務省「社会・人口統計体系(I 健康・医療)」/「社会・人口統計体系(A 人口・世帯)」をもとに作成

解説:順位の低さをどう読むか

「医師が足りない」とは限らない

人口10万人あたり医師数244.1人という数字は、政令指定都市20市で19位です。並べ方だけを見れば「川崎市は医師が少ない」という結論になります。しかしこの指標は、そのまま医療の充実度を表すわけではありません。

上位に並ぶ京都市(470.3人)、熊本市(455.1人)、岡山市(454.4人)に共通するのは、医学部と大学病院があることです。医学部があれば、教員としての医師、研修医、大学の関連病院に勤める医師が集まります。人口規模に対して医師が多くなるのは当然です。

川崎市には医学部がありません。同じ条件のさいたま市が20位(208.2人)であること、相模原市や堺市といった大都市に隣接する市が下位に集まることも、この説明を裏づけます。

東京・横浜が隣にある

もうひとつの要因が立地です。川崎市は東京都区部と横浜市に挟まれています。高度な医療が必要になったとき、市民は市外の大学病院や専門病院へ行くことができます。

これは「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見た構図とまったく同じです。あちらでは1人あたり小売販売額が20市で最下位でした。買い物も医療も、隣に大きな集積があれば、そちらへ流れます。川崎市の統計に「少なく」出るのは、市民が困っているからではなく、選択肢が市外にあるからです。

「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、市民の4割は他県で働いています。職場の近くで受診する人も相当数いるはずで、その分は川崎市の統計には表れません。

それでも注意すべき点

とはいえ、この数字を完全に無視してよいわけではありません。

「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり、川崎市の高齢化率20.2%は20市でもっとも低い水準です。つまり、いまの244.1人という医師数は「もっとも医療需要が小さい状態」での数字だということになります。

「人口ピラミッド」のページで見たとおり、市でもっとも人数が多いのは45〜49歳の層です。この塊が20年後に65歳を超えます。「出生・死亡(自然増減)」のページで見たとおり、川崎市はすでに2021年に自然減へ転じました。医療需要はこれから確実に増えます。

そのとき、医師数244.1人という水準がどう効いてくるか。市外の医療機関に頼れる立地であることは変わりませんが、高齢者にとって「電車で東京へ通院する」ことのハードルは、働き盛りの世代とは違います。

中小企業への示唆

1. 医療・福祉は市内で成長している産業——「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、医療・福祉は市内で従業者数2位(85,460人)の産業です。「開業率・廃業率」のページでは、2016〜2021年に事業所が609か所増えて増加数トップでした。医師数の順位が低いことと、この分野が伸びていることは矛盾しません。

2. 診療所は増え続けている——一般診療所は1980年の643施設から2023年の1,060施設へ1.6倍。地域のクリニックは着実に増えています。医療機関向けのサービス(レセプト、清掃、リネン、医療機器保守、人材紹介)は、市内で成立する市場です。

3. 20年後を見据えるなら——高齢化がこれから本格化することを考えると、在宅医療、訪問看護、介護連携といった領域の需要は伸びます。医師数の絶対量が政令市で低い水準にあることは、「医師以外が担う医療サポート」の需要が相対的に大きくなることを示唆しているとも読めます。

データの注意点

医師数は「医師・歯科医師・薬剤師統計」による従業地ベースの数値で、2年ごとの調査です。市内の医療機関などに勤める医師の数であり、市内に住む医師の数ではありません。

人口10万人あたりの計算には2025年の人口を使っています。医師数は2022年の値なので、3年のずれがあります。この間に人口が増えているため、実際の2022年時点の比率はこれよりわずかに高くなります。都市間の比較では同じ条件で計算しているため、順位への影響はありません。

医師の専門分野や勤務形態(病院勤務か開業か、常勤か非常勤か)は、このデータからは分かりません。