川崎市の高齢者福祉施設と定員

有料老人ホームが17年で25.8倍。介護の受け皿は民間が広げました。

このページの要点

① 有料老人ホームが25.8倍に増えた。2000年の5施設から2017年の129施設へ。定員は426人から7,828人(18.4倍)です。

② 特別養護老人ホームは3.2倍。介護老人福祉施設(特養)は1997年の16施設から2017年の52施設へ。定員は1,438人から3,722人(2.6倍)です。民間の伸びが公的施設を大きく上回りました。

③ 高齢者1000人あたり定員は12.0床→36.9床。15年で3.1倍。ただし政令市20市では13位と中位にとどまります。

施設数の推移

介護老人福祉施設と有料老人ホームの施設数

介護老人福祉施設=特別養護老人ホーム(公的性格が強い)/有料老人ホーム=民間中心

読み方:赤い線(有料老人ホーム)の伸びが劇的です。2000年に5施設しかなかったものが、2017年には129施設。青い線(特養)は16施設から52施設へと着実に増えていますが、伸び方の勢いがまったく違います。
2000年は介護保険制度が始まった年です。制度の開始が、民間の参入を一気に呼び込みました。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」(社会福祉施設等調査)をもとに作成

定員数の推移

積み上げ棒/単位は人

読み方:2000年時点では特養1,438人に対し有料老人ホーム426人と、特養が3.4倍ありました。2017年には特養3,722人に対し有料老人ホーム7,828人——完全に逆転し、有料が2.1倍になっています。
合計の定員は1,864人から11,550人へ、6.2倍。この17年間で川崎市に約1万床が新しくできた計算です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」をもとに作成

高齢者の数に見合っているか

高齢者1000人あたりの定員数

(介護老人福祉施設+有料老人ホームの定員)÷ 65歳以上人口 × 1000

読み方:2000年の12.0床から2015年の36.9床へ、15年で3.1倍になりました。
この間に65歳以上人口も154,704人から279,482人へ1.8倍に増えています。高齢者の増加を上回るペースで受け皿が広がったということです。
「高齢化率・年少人口比率」のページで見たとおり、川崎市の高齢化はこれから本格化します。この曲線が今後も上を向き続けられるかが問われます。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障/A 人口・世帯)」をもとに作成

政令指定都市20市の人口1000人あたり定員(2017年)

(介護老人福祉施設+有料老人ホームの定員)÷ 人口 × 1000/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は7.40床で20市中13位。1位の北九州市(12.56床)の6割弱です。
上位は北九州市、さいたま市、熊本市。北九州市は「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり高齢化率31.8%で20市最高——高齢者が多い都市ほど施設も多い、という当然の関係です。
川崎市の高齢化率は20.2%で20市最低。いまの13位という順位は、高齢者がまだ少ないからこそ成り立っているとも読めます。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」/「令和7年国勢調査 速報集計」をもとに作成

解説:民間が広げた受け皿

2000年、介護保険が変えたもの

川崎市の高齢者向け施設で起きたことは、数字を見れば一目瞭然です。有料老人ホームが2000年の5施設から2017年の129施設へ、25.8倍。定員は426人から7,828人へ、18.4倍になりました。

2000年は介護保険制度が始まった年です。それまで行政が措置として提供していた介護サービスが、利用者が事業者を選ぶ仕組みに変わりました。民間事業者にとって市場が開かれたということです。

いっぽう特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は16施設(1997年)から52施設(2017年)へ3.2倍。着実に増えてはいますが、有料老人ホームの伸びとは比較になりません。特養は社会福祉法人が運営し、整備には行政の計画と補助が必要です。制度の性格の違いが、伸び方の違いになりました。

定員は逆転した

もっとも象徴的なのが定員の逆転です。

2000年、特養1,438人 対 有料老人ホーム426人。特養が3.4倍でした。
2017年、特養3,722人 対 有料老人ホーム7,828人。有料が2.1倍です。

合計すると1,864人から11,550人へ、6.2倍。17年間で約1万床が新しく生まれました。その7割弱を民間の有料老人ホームが担ったことになります。

特養は原則として要介護3以上が対象で、費用は所得に応じて抑えられます。有料老人ホームは幅広い層を受け入れますが、費用は市場価格です。受け皿は増えたが、その中身は「公的で安価なもの」から「民間で選ぶもの」へ移った——数字はそう語っています。

13位という位置

人口1000人あたりの定員で見ると、川崎市は7.40床で政令市20市の13位です。中位よりやや下という位置になります。

ただしこの順位は、そのまま「不足している」ことを意味しません。上位の北九州市(12.56床)は高齢化率31.8%で20市最高、下位の京都市(4.96床)や広島市(5.54床)は大学病院など医療機関が充実した都市です。施設の必要量は、高齢者の数と他の受け皿の状況で決まります。

川崎市の高齢化率は20.2%で20市最低です。「高齢化率・年少人口比率」のページで見たとおり、老年化指数は40年で6.5倍になりました。「人口ピラミッド」のページで見たとおり、市でもっとも人数が多いのは45〜49歳の層です。この塊が20年後に65歳を超えます。

いまの13位は、高齢者がまだ少ないから成り立っている数字です。高齢者数が北九州市並みの比率になったとき、いまの11,550床では足りません。

中小企業への示唆

1. 施設129か所という取引先の母集団——有料老人ホーム129施設、特養52施設。これらは給食、清掃、リネン、寝具、介護用品、設備保守、送迎、人材派遣の継続的な取引先です。「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、医療・福祉は市内で従業者数2位(85,460人)の産業です。

2. 伸びるのは在宅サービス——施設定員11,550床に対し、65歳以上人口は31万人を超えます(2020年)。施設に入れるのはごく一部です。訪問介護、配食、見守り、移送、住宅改修——在宅を支えるサービスのほうが、市場としては大きくなります。

3. 民間参入の余地はまだある——有料老人ホームが17年で25.8倍に増えたということは、参入障壁が相対的に低いということでもあります。ただし競争も激しい。「開業率・廃業率」のページで見たとおり、医療・福祉の廃業率は24.1%——全業種のなかでは低い部類ですが、ゼロではありません。

4. 20年スパンで需要は確実に伸びる——人口動態から読める、数少ない「確実に伸びる市場」です。事業の柱を移すなら、根拠のある分野といえます。

データの注意点

数値は社会福祉施設等調査などによるもので、収録は2017年までです。それ以降のデータはこのデータベースには収録されていません。2017年から現在までにさらに増えている可能性が高い点にご留意ください。

「老人福祉施設数」は2000年の137施設から2017年の12施設へ大きく減っていますが、これは施設が減ったのではなく調査における分類の変更によるものと考えられます。このページのグラフには含めていません。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、サービス付き高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護などは、このデータには含まれていません。実際の受け皿はここに示した数より大きくなります。

政令市の比較に使った人口は2025年の値です。定員は2017年の値なので、8年のずれがあります。都市間の比較では同じ条件で計算しているため、順位への影響は限定的です。