1人あたり市税額

市民税だけなら、大阪市と130円差の2位です。

このページの要点

① 1人あたり市税は22万3,705円で政令指定都市20市の3位。大阪市25万5,659円、名古屋市23万6,764円に次ぎます。最下位の熊本市(14万7,460円)とは1.5倍の差です。

② 市民税だけなら13万4,643円で2位。1位の大阪市(13万4,773円)とはわずか130円差。市民の所得水準の高さがそのまま税収に出ています。

③ ただし2018年に大きな段差があります。1人あたり市民税は2017年の10万175円から2018年の12万6,775円へ跳ね上がりました。所得が急増したのではなく、県費負担教職員の移管にともなう税源移譲によるものです。

1人あたりの市税は、どう動いてきたか

1人あたり市民税・固定資産税の推移(2000年〜2022年)

住民基本台帳人口(日本人)で割った金額/2018年の段差は税源移譲による

読み方:青が市民税、緑が固定資産税です。
2018年に市民税が10万175円から12万6,775円へ、2万6,600円も跳ね上がっています。これは市民の所得が26%増えたという意味ではありません。2018年度に県費負担教職員が神奈川県から川崎市へ移管され、あわせて個人住民税所得割2%分が県から市へ移されたためです。2017年以前と2018年以降は、そのままつなげて比べられません。
それを除くと、市民税は2000年の8万5,937円から2017年の10万175円へ17年で16.6%増。2018年以降は12万6,775円から13万4,643円へ4年で6.2%増です。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:総務省「市町村税課税状況等の調」、住民基本台帳)をもとに作成

固定資産税は2000年より低い

1人あたり固定資産税(円)

読み方:1人あたり固定資産税は2000年の9万4,931円から2006年の7万9,724円まで下がり、そこから回復して2022年は8万9,062円。22年たっても2000年の水準に戻っていません。
固定資産税の総額そのものは増えています。分母である人口がそれ以上に増えたため、1人あたりでは下がりました。人口増加が「1人あたり」の指標を押し下げる典型的な例です。
2000年代前半の下落は、地価の下落(負担調整)が主因です。「地価公示の推移」のページと合わせて読むと動きがつながります。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

政令指定都市20市のなかで

2022年/住民基本台帳人口(日本人)で割った金額/川崎市を濃い色で表示

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

市民税と固定資産税、どちらで稼いでいるか

横軸が1人あたり市民税、縦軸が1人あたり固定資産税(円・2022年)

読み方:右上にあるほど両方とも多い都市です。大阪市が突出し、名古屋市、川崎市が続きます。
川崎市(赤い点)は横軸では右端に近いのに、縦軸では大阪市・名古屋市に大きく離されています。市民税は大阪市とほぼ同じなのに、固定資産税は3万1,824円少ない。
固定資産税はオフィスビル・商業施設・工場などの事業用資産に大きく左右されます。川崎市は「住む人の所得」で稼ぎ、大阪市・名古屋市は「都心の資産」で稼ぐ——この違いが図に表れています。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

解説:所得で稼ぐ都市

市民税は大阪市と130円差

2022年度、川崎市の1人あたり市民税は13万4,643円。政令指定都市20市で2位です。

1位の大阪市は13万4,773円。その差はわずか130円。3位の名古屋市は13万3,964円ですから、上位3市はほぼ横一線に並んでいます。

最下位の北九州市は8万3,437円。川崎市の62%にとどまります。20市の差は1.6倍です。

この結果は他のページの発見と一貫しています。「政令指定都市20市 データ比較」で見た納税者1人あたり所得459.3万円(20市2位)、「市民の最終学歴」で見た大卒率33.7%(20市1位)、「職業構成と雇用形態」で見た専門技術職24.9%・正規雇用率59.5%(いずれも20市1位)。高学歴・専門職・正規雇用・高所得——その帰結として市民税があるという筋道です。

固定資産税では引き離される

いっぽう固定資産税は1人あたり8万9,062円で3位。1位の大阪市(12万886円)とは3万1,824円の差があります。2位の名古屋市(10万2,800円)にも1万3,738円離されています。

市民税ではほぼ並んでいた大阪市に、固定資産税では大きく引き離される。この違いはどこから来るのでしょうか。

固定資産税は土地・家屋・償却資産にかかる税です。とくにオフィスビル、商業施設、工場などの事業用資産が大きく効きます。大阪市の梅田・本町、名古屋市の名駅・栄——都心の高度利用された土地とビル群が、そのまま税収になります。

「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、大阪市の昼夜間人口比率は128.4%、名古屋市は111.2%、川崎市は87.3%。都心機能の厚みの差が、そのまま固定資産税の差になっていると読めます。

合計すると、川崎市の1人あたり市税は22万3,705円で3位。大阪市25万5,659円、名古屋市23万6,764円に次ぐ位置です。

2018年の段差に注意

推移を見るときに、必ず押さえておくべき断層があります。

1人あたり市民税は2017年の10万175円から、2018年に12万6,775円へ跳ね上がりました。1年で2万6,600円、26.6%の増加です。

これは市民の所得が急に増えたわけではありません。2018年度に県費負担教職員が神奈川県から川崎市へ移管され、それにともなって個人住民税所得割2%分が県から市へ移されたためです。同時に市は教職員の人件費を負担することになったので、実質的な余裕が増えたわけでもありません。

「歳入決算の推移」「歳出決算の推移」のページで見た2018年度の段差と、同じ原因です。2017年以前と2018年以降は、そのままつなげて比べられません。

断層を除いて見ると、市民税は2000年の8万5,937円から2017年の10万175円へ17年で16.6%増、2018年の12万6,775円から2022年の13万4,643円へ4年で6.2%増。いずれの期間も着実に伸びています。

固定資産税は22年前より低い

意外なのは固定資産税です。1人あたりで見ると、2000年の9万4,931円から2022年の8万9,062円へ、22年で5,869円減っています。

底は2006年の7万9,724円。そこから回復基調にありますが、2000年の水準には戻っていません。

2000年代前半の下落は地価の下落によるものです。そして回復期に伸びが鈍い理由は分母にあります。固定資産税の総額そのものは増えているのですが、人口がそれ以上に増えたため、1人あたりでは伸びが打ち消されました。

人口増加は「1人あたり」の指標を押し下げる——川崎市の統計を読むうえで繰り返し出てくるパターンです。

中小企業への示唆

1. 川崎の市場は「所得」で見る——1人あたり市民税20市2位。川崎の強みは、住んでいる人の所得水準です。単価の高い商品・サービスが受け入れられやすい市場だといえます。

2. ただし法人の厚みは大阪・名古屋に劣る——固定資産税で3万円以上引き離されているのは、事業用資産の集積の差です。B to B市場としては大阪・名古屋ほどの厚みはない。市内の法人だけを相手にする事業設計は慎重に。

3. 固定資産税は経費として重い——川崎市の1人あたり固定資産税は20市3位。市内に土地・建物・設備を持つコストは相対的に高いということです。倉庫や工場の立地は、この点を織り込んで検討すべきです。

4. 市の財源は安定している——市民税と固定資産税で1人あたり22万円超。「政令指定都市20市 データ比較」で見た財政力指数の高さもここから来ています。補助金や公共調達の原資は、他都市より確保しやすい環境です。

データの注意点

「市町村民税」は個人分と法人分の合計です。この統計では両者を分けられません。大阪市・名古屋市は法人分の割合が高いと考えられるため、「市民の所得の高さ」だけで順位を説明することはできません。川崎市が2位という結果は、個人分の厚さを示唆しますが、断定はできません。

金額は課税状況等の調による調定額(決算額ではありません)。市税全体には、ほかに市たばこ税、都市計画税、事業所税、軽自動車税などがありますが、この統計では市民税と固定資産税の2つしか市区町村別に取れません。市税の全体像ではない点にご注意ください。

1人あたりの計算には住民基本台帳人口(日本人)を使っています。外国人を含めると分母が増えるため、金額はやや小さくなります。都市間比較では同じ基準を使っているため、順位には影響しません。

2018年の段差については本文のとおりです。時系列を語るときは、必ずこの断層に触れてください。