このページの要点
① 2005年度に主役が入れ替わった。2004年度までは固定資産税のほうが大きかったのが、2005年度に市民税が逆転。以降その差は開き続けています。
② 市民税は22年で88%増。2000年度の1,058億円から2022年度の1,989億円へ。いっぽう固定資産税は1,169億円から1,316億円へ12.6%増にとどまります。
③ 市税は歳入の41.0%。2022年度の市民税+固定資産税は3,305億円。市民1人あたり21.2万円を負担している計算になります。
市税の柱が入れ替わった
市民税と固定資産税の推移(2000年度〜2022年度)
単位は億円/2005年度に大小が逆転しています
とくに2018年度に1,452億円から1,849億円へ大きく跳ねているのは、2018年度からの税源移譲(道府県民税から政令市民税への配分変更)によるものです。制度変更なので、市民の所得が急増したわけではありません。
それを差し引いても、2000年度から2017年度までで市民税は37%増えており、実質的な伸びがあります。
出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」(地方財政状況調査)をもとに作成
市税の構成比
市民税と固定資産税の合計に占める割合(%)
これは川崎市の産業構造の変化と重なります。「製造品出荷額等の推移」のページで見たとおり、市の製造品出荷額はピークの1986年から2020年まで6割減りました。工場が生む固定資産税の伸びが止まる一方、東京へ通う住民の所得が市民税を押し上げた——市税の内訳は、その構造転換をそのまま映しています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成
市税は歳入をどれだけ支えているか
歳入に占める市税(市民税+固定資産税)の割合
(市民税+固定資産税)÷ 歳入決算総額(%)
4割前後を自前の税収でまかなえるというのは、地方自治体としてはかなり高い水準です。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見た財政力指数1.02(20市で唯一の1.0超)は、この税収の厚みに支えられています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成
解説:住民が支える財政
2005年、静かな転換点
川崎市の市税収入で、市民税が固定資産税を上回ったのは2005年度です。それまでは工場や事業所、土地建物にかかる固定資産税のほうが大きい「工業都市の財政」でした。
2022年度の内訳は市民税1,989億円(60.2%)、固定資産税1,316億円(39.8%)。22年で市民税は88%増、固定資産税は12.6%増です。伸びのほとんどを市民税が担いました。
ただし正確に読むには、制度変更を差し引く必要があります。2018年度に市民税が1,452億円から1,849億円へ跳ねているのは、政令指定都市への税源移譲によるものです。個人住民税の所得割のうち、道府県民税分の一部が政令市民税に移りました。市民の所得が1年で27%増えたわけではありません。
制度変更前の2000年度から2017年度で見ても、市民税は1,058億円から1,452億円へ37%増。実質的な伸びは確かにあります。
製造業の縮小と、そのまま重なる
固定資産税の伸びが鈍い理由は、このサイトの別のページで説明がつきます。
「製造品出荷額等の推移」のページで見たとおり、川崎市の製造品出荷額は1986年の8.61兆円をピークに、2020年には3.40兆円まで6割減りました。臨海部の重化学工業が縮小すれば、そこにかかる固定資産税の伸びも止まります。
いっぽう市民税を押し上げたのは、東京へ通う住民です。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり、川崎市の納税者1人あたり課税対象所得は459.3万円で20市中2位。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、市民の4割は他県で働いています。市外で稼いだ所得が、市民税として市の財政を支えているという構図です。
市税の内訳の変化は、川崎市が「工場の街」から「住む街」へ移った過程を、財政の側から記録したものだといえます。
この構造の弱点
住民の所得に依存する財政には、固有のリスクがあります。
ひとつは景気の影響を受けやすいこと。固定資産税は土地建物にかかるため景気変動に鈍いのに対し、市民税は所得に直結します。グラフを見ると、リーマンショック後の2009年度から2010年度にかけて市民税が1,445億円から1,273億円へ落ちています。固定資産税は同じ時期ほとんど動いていません。
もうひとつがふるさと納税です。「ふるさと納税による流出額」のページで見たとおり、川崎市は年間154億円の市税を失っています。この制度が削るのは、まさに個人住民税です。市民税1,989億円に対して154億円ですから、市民税の約8%が制度的に流出していることになります。市民税に依存する財政ほど、この影響は大きくなります。
中小企業への示唆
1. 市民1人あたり21.2万円という負担——市税3,305億円を人口156万人で割った数字です。世帯あたりでは約44万円。これが市民サービスの原資であり、同時に可処分所得から差し引かれる金額でもあります。
2. 固定資産税は事業コスト——市内で工場や店舗を持つ事業者にとって、固定資産税1,316億円の一部は自社の負担です。伸びが鈍いということは、税額が急増する局面ではないということでもあります。
3. 市の財政は住民の所得に連動する——景気後退で市民の所得が落ちれば、市税も落ちます。「一般会計 決算額と市債残高」のページで見たとおり、歳出の3割は削れない扶助費です。景気が悪化したとき、真っ先に削られるのは市の独自施策——中小企業向けの補助金や制度融資は、その対象になりやすい部類です。
データの注意点
数値は地方財政状況調査(決算統計)による決算額です。市税全体には市民税・固定資産税のほかに市たばこ税、都市計画税、事業所税などもありますが、このデータベースには収録されていないため、このページでは2税のみを扱っています。市税総額はここに示した金額より大きくなります。
2018年度の市民税の急増は、政令指定都市への税源移譲による制度変更です。前後の年をまたいだ増減率を、そのまま「市民の所得の伸び」と読まないでください。
市民税には個人分と法人分の両方が含まれます。このデータからは内訳が分かりません。