川崎市の一般会計 決算額と市債残高

お金は増えた。でも自由に使える分は減っています。

このページの要点

① 歳出の3割が扶助費になった。2000年の574億円(歳出の10.5%)から2022年の2,387億円(29.9%)へ。22年で4.2倍に膨らみました。

② 歳入は8,053億円(2022年度)。1980年の2,307億円から3.5倍になりました。うち市税(市民税+固定資産税)は3,305億円で、歳入の41.0%を占めます。

③ 市債残高は減っている。2010年の8,531億円から2022年の8,039億円へ。実質公債費比率も15.6%(2008年)から8.7%(2022年)へ大きく改善しました。

歳入と歳出の規模

一般会計の歳入・歳出決算額の推移(1980年度〜2022年度)

単位は億円/毎年度の決算額

読み方:歳入は1980年度の2,307億円から2022年度の8,053億円へ3.5倍になりました。人口が104万人から154万人へ1.5倍になったことを考えると、1人あたりでも大きく増えています。
2020年度に9,072億円へ急増しているのは、特別定額給付金(1人10万円)などコロナ禍の国の交付金が入ったためです。翌年以降は落ち着いています。
歳出は歳入をわずかに下回って推移しており、赤字決算にはなっていません。

出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」(地方財政状況調査)をもとに作成

膨らみ続ける扶助費

扶助費と公債費の推移(2000年度〜2022年度)

扶助費=生活保護・児童手当・障害福祉などの社会保障費/公債費=借金の返済

読み方:扶助費は2000年度の574億円から2022年度の2,387億円へ、22年で4.2倍になりました。年平均で約82億円ずつ増えている計算です。
いっぽう公債費(借金の返済)は587億円から713億円へ、ほぼ横ばい。市の財政を圧迫しているのは借金ではなく、社会保障費です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成

歳出に占める扶助費の割合

扶助費 ÷ 歳出決算総額(%)

読み方:2000年度の10.5%から2022年度の29.9%へ、約3倍になりました。
いまや川崎市が使うお金の3割が扶助費です。これは法律で支給が決まっている経費で、市の判断では減らせません。この割合が上がるほど、市が独自の施策に使えるお金は減ります。
「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり、川崎市の高齢化率は20市でもっとも低い20.2%です。高齢化がこれから本格化することを考えると、この曲線はまだ上を向く余地があります。

出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成

借金は減っている

地方債現在高(市債残高)の推移

単位は億円/年度末の残高

読み方:市債残高は2010年度の8,531億円から2022年度の8,039億円へ、492億円減りました。金額としては大きく見えますが、12年で6%弱の減少にとどまります。
市民1人あたりに直すと約52万円。ただし市債は道路や学校といった長く使う資産をつくるための借入なので、額そのものが問題というわけではありません。返済の負担が重すぎないかを見る指標が、次の「実質公債費比率」です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成

実質公債費比率の推移

収入に対する借金返済の負担割合/18%を超えると国の許可が必要になります

読み方:2008年度の15.6%から2022年度の8.7%へ、14年で6.9ポイント改善しました。
この指標は18%を超えると地方債の発行に国の許可が必要になり、25%を超えると発行が制限されます。2008年の15.6%はその手前まで来ていた水準です。そこから半分近くまで下げたのは、財政運営としては大きな成果といえます。

出典:総務省「社会・人口統計体系(D 行政基盤)」をもとに作成

解説:お金はあるが、余裕はない

歳入は3.5倍になった

川崎市の一般会計の歳入は、1980年度の2,307億円から2022年度の8,053億円へ、42年で3.5倍になりました。人口が1.5倍になったことを考えると、1人あたりでも2倍以上です。

2020年度に9,072億円へ跳ね上がっているのは、特別定額給付金をはじめとするコロナ禍の国の交付金によるものです。一時的な要因なので、傾向として読むときは前後の年を見たほうが正確です。

歳入の内訳では、市税(市民税+固定資産税)が3,305億円で41.0%を占めます。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり、川崎市の財政力指数1.02は20市で唯一1.0を超える水準です。自前の税収でまかなえる度合いは、政令市でもっとも高い。

ところが、使えるお金は減っている

問題はここからです。歳出のうち扶助費が、2000年度の574億円から2022年度の2,387億円へ4.2倍に膨らみました。歳出に占める割合は10.5%から29.9%へ。

扶助費は生活保護、児童手当、障害福祉サービス、子ども医療費などの社会保障費です。法律や制度で支給が決まっているため、市の判断で削ることができません。この割合が上がるほど、市が独自に使えるお金は減ります。

これが「財政力指数・経常収支比率」のページで見る経常収支比率の悪化につながります。川崎市の経常収支比率は2000年度の84.6%から2022年度の97.1%へ上昇しました。収入の97%が、毎年決まって出ていく経費で消えるという状態です。

財政力指数は20市で1位、しかし経常収支比率は20市で9番目に高い。「稼ぐ力はあるが、自由に使えるお金がない」——これが川崎市の財政の実像です。

借金は着実に減らしてきた

いっぽうで、借金の管理は改善しています。実質公債費比率は2008年度の15.6%から2022年度の8.7%へ、6.9ポイント下がりました。

この指標は18%を超えると地方債の発行に国の許可が必要になります。2008年の15.6%は、その基準に近づいていた水準でした。そこから半分近くまで下げたのは、財政運営の成果として評価できます。市債残高も2010年度の8,531億円から2022年度の8,039億円へ減りました。

つまり川崎市の財政は、借金は減らせたが、社会保障費は減らせないという構図にあります。前者は市の努力で動かせますが、後者は人口構造と国の制度で決まるためです。

中小企業への示唆

1. 市の独自施策は今後細りやすい——扶助費が歳出の3割を占め、経常収支比率が97%という状況では、市が新しい支援策に回せる財源は限られます。中小企業向けの補助金・制度融資は、国や県の制度を軸に考えたほうが安全です。

2. 「ふるさと納税」の重みが増す——「ふるさと納税による流出額」のページで見たとおり、川崎市は年間154億円の市税を失っています。これは扶助費1年分の増加額(約82億円)の2年分にあたります。財政に余裕がない状態では、この流出の影響は小さくありません。

3. 福祉分野は市場として拡大している——扶助費2,387億円は、そのまま市内の福祉サービス事業者への支払いを含みます。「事業所数・従業者数の推移」で見たとおり医療・福祉は市内で従業者数2位の産業です。行政の財政は苦しくても、この分野の事業機会は増えています。

4. 公共工事は増えにくい——実質公債費比率を下げてきたということは、新規の借入を抑えてきたということです。大型の公共投資が急増する局面ではありません。建設業は民間需要を軸に見たほうが現実的です。

データの注意点

数値は地方財政状況調査(決算統計)によるもので、一般会計等の決算額です。上下水道や病院などの公営企業会計は含みません。

2020年度の歳入増はコロナ禍の国庫支出金によるもので、市の財政力が高まったわけではありません。

扶助費・公債費・市債残高は収録年が指標ごとに異なります(扶助費・公債費は2000年度から、市債残高は2010年度から)。グラフではデータのある年のみ表示しています。