このページの要点
① 太陽光発電のある住宅は1万5,000戸、全住宅の1.98%。2008年の1,930戸(0.31%)から15年で7.8倍に増えました。
② それでも政令指定都市20市では18位。1位の浜松市(9.30%)の5分の1にとどまります。
③ 理由は「屋根がない」こと。川崎市の一戸建て比率は24.2%で20市中19位。太陽光発電の普及率は、一戸建て比率とほぼ完全に連動します。川崎の低さは意識の問題ではなく、住宅の形の問題です。
15年でどれだけ増えたか
省エネ・再エネ設備のある住宅数(2008年〜2023年・川崎市)
住宅・土地統計調査(5年ごと)/棒が戸数
複層ガラス・二重サッシは8万4,600戸から17万7,500戸へ2.1倍。戸数では太陽光の12倍あります。実際にいちばん普及したのは窓の断熱でした。
いっぽう太陽熱温水器はほぼ横ばい(5,910戸→6,500戸)。1970〜80年代に普及した設備で、太陽光発電に置き換わりつつあります。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:住宅・土地統計調査)をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
太陽光発電のある住宅の割合(2023年)
太陽光発電機器のある住宅 ÷ 居住世帯のある住宅/川崎市を濃い色で表示
川崎市の下にいるのは札幌市(1.25%)と大阪市(0.95%)だけ。ひとつ上は福岡市(2.03%)です。
下位に並ぶのは大阪市・札幌市・川崎市・福岡市。札幌市を除けば、いずれもマンションの多い都市です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成
太陽光の普及率は、一戸建て比率でほぼ決まる
横軸が一戸建て住宅の割合、縦軸が太陽光発電のある住宅の割合(%・2023年)
川崎市(赤い点)は左下。一戸建て比率24.2%は20市中19位で、大阪市(22.6%)、福岡市(20.0%)に次ぐ低さです。
川崎で太陽光が少ないのは、市民の意識が低いからではありません。載せられる屋根がないからです。マンション住まいの人に「太陽光を付けよう」と言っても始まりません。
例外は札幌市(一戸建て33.8%なのに太陽光1.25%)。積雪と日照時間の問題です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
複層ガラス・二重サッシの割合(2023年)
窓の断熱がされている住宅の割合/川崎市を濃い色で表示
2位以下は仙台市、新潟市と、寒い地域が続きます。この指標は気候をそのまま映しています。
川崎市の23.4%は「4戸に1戸」。裏を返せば4分の3の住宅では窓の断熱がまだ行われていないということです。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の太陽光発電と一戸建て比率(2023年)
棒が太陽光発電のある住宅の割合、菱形が一戸建て住宅の割合
もっとも高いのは麻生区の3.35%(一戸建て40.4%)、次いで宮前区2.97%(29.8%)。もっとも低いのは川崎区の1.16%(20.7%)。
麻生区と川崎区の差は2.9倍。一戸建て比率の差(40.4%対20.7%、2.0倍)とほぼ同じ順序です。
複層ガラスも同じ並び。麻生区33.7%に対し川崎区19.5%。省エネ改修は、北部の戸建てエリアで進んでいます。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
解説:屋根の問題
15年で7.8倍
2023年10月時点で、川崎市には太陽光発電機器のある住宅が1万5,000戸あります。居住世帯のある住宅75万7,600戸の1.98%にあたります。
15年前の2008年は1,930戸、0.31%でした。15年で7.8倍です。
伸びがとくに大きかったのは2008年から2013年で、1,930戸から6,590戸へ3.4倍。2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)の効果がここに表れています。その後も2018年1万600戸、2023年1万5,000戸と着実に増えました。
それでも20市で18位
ところが政令指定都市20市のなかでは18位です。
1位の浜松市は9.30%。川崎市の4.7倍です。2位の熊本市7.49%、3位の岡山市6.91%、4位の静岡市6.50%。いずれも川崎市の3倍以上あります。
川崎市より低いのは札幌市(1.25%)と大阪市(0.95%)の2市だけ。ひとつ上は福岡市(2.03%)で、その差はわずか0.05ポイントです。
載せられる屋根がない
この差は何から来るのでしょうか。
20市を散布図に置くと、答えははっきりします。横軸に一戸建て比率、縦軸に太陽光普及率を取ると、きれいな右上がりの線が現れます。
川崎市の一戸建て比率は24.2%で20市中19位。大阪市(22.6%)、福岡市(20.0%)に次ぐ低さです。逆に浜松市は61.6%、新潟市64.0%、静岡市59.1%。
川崎で太陽光が少ないのは、市民の意識が低いからではありません。載せられる屋根がないからです。マンションの4階に住む人が「太陽光を付けたい」と思っても、それは個人の意思では決まりません。
唯一の例外が札幌市です。一戸建て比率33.8%と川崎市より高いのに、太陽光は1.25%。積雪と冬の日照時間という別の制約が効いています。
この構図は、川崎市の環境政策を考えるうえで重要です。戸建て住宅への太陽光設置補助は、川崎では対象が限られる。マンションの共用部、事業所の屋根、そして「産業別の構成」で見た臨海部の工場——川崎で意味のある再エネ政策は、住宅ではなく事業所側にあります。
実際に普及したのは窓だった
太陽光より、はるかに多くの住宅に入った設備があります。複層ガラス・二重サッシです。
2008年の8万4,600戸から2023年の17万7,500戸へ、15年で2.1倍。戸数では太陽光(1万5,000戸)の11.8倍あります。
普及率は23.4%。20市では13位です。1位は札幌市の81.5%——寒冷地では窓の断熱が生活の必需品だからです。2位以下も仙台市、新潟市と寒い地域が続きます。この指標は気候をそのまま映しています。
川崎市の23.4%は「4戸に1戸」。裏を返せば、4分の3の住宅ではまだ窓の断熱が行われていません。「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、川崎市には1991〜2000年築の住宅が15万1,100戸あります。この世代の住宅は単板ガラスが標準でした。
麻生区と川崎区で2.9倍
市内でも同じ関係がそのまま現れます。
太陽光の普及率は麻生区3.35%がもっとも高く、宮前区2.97%、幸区・多摩区1.95%、高津区1.70%、中原区1.42%、川崎区1.16%と続きます。麻生区と川崎区の差は2.9倍です。
一戸建て比率も麻生区40.4%、宮前区29.8%、多摩区24.6%……川崎区20.7%。ほぼ同じ順序です。
複層ガラスも同じ並び。麻生区33.7%、宮前区25.6%に対し、川崎区19.5%。省エネ改修は北部の戸建てエリアで進んでいます。
中小企業への示唆
1. 住宅太陽光の営業エリアは北部一択——麻生区・宮前区で一戸建て比率が30〜40%。この2区に絞るのが合理的です。川崎区・中原区で戸建て太陽光を売り歩くのは、母数が小さすぎます。
2. 本命は窓の断熱——複層ガラスの未導入が4分の3、およそ58万戸。太陽光の市場(未導入74万戸)より単価は低いものの、マンションでも工事できるのが決定的な違いです。内窓(二重サッシ)なら賃貸でも可能な場合があります。国の断熱改修補助も継続しています。
3. 1991〜2000年築の15万1,100戸が主戦場——築25〜35年、単板ガラスが標準だった世代。設備更新のタイミングと重なります。
4. 事業所・工場の屋根を狙う——川崎の住宅には屋根がありませんが、臨海部の工場・倉庫にはあります。「産業別の構成(区別)」で見たとおり、川崎区は市内製造業の中心。自家消費型の産業用太陽光は、住宅用より市場が大きい可能性があります。
データの注意点
住宅・土地統計調査は標本調査です。結果は100戸単位に丸められているため、7区の合計と市の値がわずかにずれることがあります。
対象は「居住世帯のある住宅」です。空き家、事業所、工場の屋根に設置された太陽光は含まれません。市内の太陽光発電の全体像ではない点にご注意ください。
「太陽光を利用した発電機器のある住宅数」は、その住宅で発電機器を使えるかどうかで判定されます。共同住宅で共用部に設置されている場合の扱いは、調査の定義によります。
調査は5年ごと(2008年・2013年・2018年・2023年)です。間の年の動きはわかりません。
一戸建て比率は、一戸建住宅数 ÷ 居住世帯のある住宅数で計算しています。