CO2排出量(部門別)

2023年度、産業部門が1年で4割減りました。

出典は川崎市のオープンデータです:市区町村別の温室効果ガス排出量は e-Stat(政府統計の総合窓口)にはありません。川崎市「温室効果ガス排出状況について」が公開するCSVをもとにしています。2023年度は暫定値、2022年度は改定値、確定値は2021年度までです。

このページの要点

① 二酸化炭素排出量は1990年度2,547万トンから2023年度1,507万トンへ、40.8%減りました。川崎市の温室効果ガスの97.4%はCO2です。

② 2023年度だけで産業部門が1,232万トンから739万トンへ。1年で40.0%減です。市全体でも1年で25.4%減りました。

③ 産業系(エネルギー転換+産業+工業プロセス)の割合は68.0%。1990年度の85.3%からは下がりましたが、全国平均を大きく上回る水準が続いています。

33年でどう減ったか

部門別の二酸化炭素排出量(1990〜2023年度)

単位は万トン-CO2/2023年度は暫定値

読み方:いちばん厚いのが産業部門です。1990年度1,730万トン、2022年度1,232万トン、そして2023年度739万トン。
2023年度の1年で493万トン、40.0%減りました。市全体の減少(684万トン)の72%を、産業部門1つで説明できます。
これは省エネの積み重ねではありません。臨海部の設備が止まったことによる変化です。「川崎港の取扱貨物量」のページで見たとおり、鉄鉱石の輸入は2022年の558万トンから2023年の235万トンへ57.9%減っています。原料が入らなくなり、CO2も出なくなった。2つの統計が同じことを示しています。
民生(家庭系)は1990年度110万トンから2023年度177万トンへ増えています。「人口の推移」で見たとおり、この間に人口は約45万人増えました。

出典:川崎市「部門別市内二酸化炭素排出量」をもとに作成

部門別の構成比

各年度を100%としたときの割合

読み方:産業部門の割合は1990年度67.9%から2022年度61.0%へ、じわじわ下がってきました。それが2023年度に49.0%まで落ちます。
相対的に増えたのは民生です。家庭系は4.3%から11.8%へ、業務系は3.7%から9.9%へ。どちらも約2.7倍の比重になりました。
ただしこれは家庭の排出が増えたというより、産業が減ったぶん相対的に目立つようになったという面が大きいといえます。

出典:川崎市「部門別市内二酸化炭素排出量」をもとに作成

1990年度を100としたときの部門別の動き

部門ごとの指数/点線が市全体

読み方:33年で明確に増えたのは民生(家庭系)160.1と民生(業務系)158.7。どちらも1.6倍です。
減ったのは産業42.7(1990年度の43%まで)、工業プロセス52.9、エネルギー転換67.8、運輸92.3。
市全体は59.2。産業部門が減ったことが、市全体の減少をほぼ独りで作っています。
「業種別 出荷額シェア」のページで見たとおり、川崎区の製造業は石油38.4%・化学29.7%・鉄鋼14.6%で82.7%。この3業種がCO2の主な発生源です。

出典:川崎市「部門別市内二酸化炭素排出量」をもとに作成

CO2以外のガス

温室効果ガスの内訳(1990〜2023年度)

CO2以外のガス(CO2換算・万トン)/CO2は桁が違うため別枠

読み方:川崎市の温室効果ガスのうち97.4%はCO2です(2023年度)。残り2.6%が6種類のガスに分かれます。
大きく減ったのが六フッ化硫黄(SF6)。1990年度の191.2万トン-CO2から、2023年度は2.1万トン-CO2へ。98.9%減です。電気設備の絶縁ガスで、回収と代替が進みました。
PFCも64.4万トン(2000年度)から1.0万トンへ。フッ素系ガスは全体として大きく減りました。
いっぽうHFC(代替フロン)は1990年度30.8万トンから2023年度23.6万トンへ23.4%減ですが、2019年の33.9万トンをピークに、いまも1990年代より高い水準が続いています。エアコンや冷蔵庫の冷媒で、オゾン層を壊さない代わりに温室効果が高いガスです。

出典:川崎市「市内温室効果ガス総排出量」をもとに作成

解説:高炉が止まった年

1年で25.4%減った

川崎市の二酸化炭素排出量は、2022年度の2,020万トンから2023年度の1,507万トンへ、1年で513万トン、25.4%減りました。

省エネや再生可能エネルギーの導入で、1年に25%も減ることはありません。何かが止まったのです。

部門別に見ると答えが出ます。産業部門が1,232万トンから739万トンへ、493万トン(40.0%)減。市全体の減少513万トンの96%が、産業部門1つによるものです。

港の統計と一致する

この変化は、まったく別の統計でも確認できます。

「川崎港の取扱貨物量」のページで見たとおり、鉄鉱石の輸入は2022年の558万トンから2023年の235万トンへ、57.9%減りました。石炭も463万トンから369万トンへ20.3%減っています。

原料が入ってこなくなり、CO2も出なくなった。港湾統計(国土交通省)と温室効果ガス排出量(川崎市)という、作成者も目的もまったく違う2つの統計が、同じ年に同じ方向へ大きく動いています。

「業種別 出荷額シェア」のページで見たとおり、川崎区の製造品出荷額は石油製品38.4%、化学工業29.7%、鉄鋼業14.6%で82.7%。鉄鋼業が縮小すれば、CO2も港の貨物も同時に減ります。

「市内総生産と産業別構成」のページで見た製造業の付加価値も、2019年度1兆3,667億円から2022年度9,871億円へ27.8%減っていました。3つの統計が同じ方向を指しています。

33年で40.8%減

長期で見ると、川崎市のCO2は1990年度の2,547万トンから2023年度の1,507万トンへ、40.8%減りました。

ただし部門ごとの動きはまったく違います。1990年度を100とした指数で見ると——

減ったもの:産業42.7、工業プロセス52.9、エネルギー転換67.8、運輸92.3、廃棄物90.4。

増えたもの:民生(家庭系)160.1、民生(業務系)158.7。

家庭からの排出は1.6倍になっています。「人口の推移」のページで見たとおり、川崎市の人口はこの間に約45万人増えました。人が増えれば、家庭の排出は増えます。

それでも市全体が40.8%減ったのは、産業部門の減少がそれをはるかに上回ったためです。

それでも産業系が68%

産業系(エネルギー転換+産業+工業プロセス)の割合は、1990年度の85.3%から2023年度の68.0%へ下がりました。

それでも3分の2以上です。全国の産業部門の割合はおおむね3〜4割程度ですから、川崎市は突出して産業系に偏っています。

「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎市の工業専用地域は1,782ha、用途地域の14.0%を占め、これはデータのある19市で3位。市域の7分の1を装置産業に割いている街の必然的な結果です。

裏を返せば、市民一人ひとりの努力で動く部分は小さいということでもあります。「住宅の太陽光発電と省エネ設備」のページで見たとおり、川崎市の住宅太陽光は1.98%で20市18位でした。仮にこれが倍になっても、民生(家庭系)177万トンの一部が減るだけです。

SF6が98.9%減った

CO2以外のガスにも、はっきりした動きがあります。

もっとも劇的なのが六フッ化硫黄(SF6)。1990年度の191.2万トン-CO2から2023年度の2.1万トン-CO2へ、98.9%減。

SF6は電気設備の絶縁に使われるガスで、CO2の2万倍以上の温室効果があります。回収の義務づけと代替技術によって、ほぼ排出がなくなりました。

PFCも2000年度の64.4万トン-CO2から2023年度の1.0万トン-CO2へ。98.4%減です。

いっぽうHFC(ハイドロフルオロカーボン)は違う動きをしました。1990年度30.8万トン、2000年度に10.2万トンまで下がったあと増加に転じ、2019年度に33.9万トンでピーク。2023年度は23.6万トンです。

HFCはオゾン層を壊さない代替フロンとして普及しましたが、温室効果は高い。オゾン層の問題を解決した結果、別のガスが増えたという構図です。近年は回収・代替が進んで減少に転じていますが、2000年度の10.2万トンと比べれば2.3倍の水準にあります。

中小企業への示唆

1. 川崎の脱炭素は「臨海部の話」——産業系が68.0%。市の目標達成は、数社の大規模事業所の動向で決まります。中小企業の努力が市全体の数字を動かす余地は、構造的に小さい。

2. ただし民生(業務系)は1.6倍に増えている——149万トン、全体の9.9%。オフィス・店舗・事務所からの排出です。ここは中小企業が直接関わる部分で、今後の削減要求はこちらに向かいます。

3. 取引先からの要請が来る——大企業が自社の排出(Scope1・2)を減らしたあと、次はサプライチェーン(Scope3)です。臨海部の事業所と取引がある中小企業には、排出量の報告を求められる可能性があります。

4. HFCの管理は法令上の義務——23.6万トン-CO2。2019年度のピークからは減りましたが、2000年度の2.3倍です。業務用エアコン・冷凍冷蔵機器を持つ事業者には、フロン排出抑制法にもとづく点検義務があります。飲食店、小売店、倉庫が対象です。

5. 産業構造の転換はリスクでもある——2023年度に産業部門が40%減ったのは、設備が止まったからです。「川崎港の取扱貨物量」で見たとおり、鉄鉱石は5年で61.7%減。臨海部に依存した取引は、この流れを織り込む必要があります。

データの注意点

2023年度は暫定値、2022年度は改定値です。確定値は2021年度までです。とくに2023年度の大きな減少は、今後の確定値で数字が動く可能性があります。

収録されているのは1990年度・2000年度・2005年度・2010年度、および2011年度以降の各年度です。1990年代の途中は飛んでいます。

単位は万トン-CO2。CO2以外のガスは、温室効果の強さをCO2に換算した値です。

「市内」の排出量です。川崎市内で消費されたエネルギーにもとづいて計算されます。市内で発電した電気を市外で使う場合の扱いなど、算定方法によって数字は変わります。

部門の区分は、エネルギー転換(発電所・製油所など)、産業(工場)、民生(家庭系)、民生(業務系=オフィス・店舗)、運輸、廃棄物、工業プロセスの7つです。

2023年度の産業部門の急減について、川崎市の公表資料に個別の説明はありません。このページで「臨海部の設備が止まった」としているのは、港湾統計・工業統計・市民経済計算との整合から推測したものです。断定ではありません。