このページの要点
① 小学校の児童数はV字回復した。1980年の10万1,517人から2000年の6万3,108人まで減ったあと、2024年は7万4,486人へ。底から1万1,378人(+18.0%)増えています。
② 学校は減っていない。むしろ16校増えた。小学校は102校(1980年)から118校(2024年)へ。全国で統廃合が進むなか、川崎市は増やしてきた数少ない自治体です。
③ ただし幼稚園は半減以下。在園者数は2万7,044人(1980年)から1万1,791人(2024年)へ−56.4%。園数も120園から78園に減りました。子どもの行き先が幼稚園から保育所へ移ったためです。
45年間の児童生徒数
小学校児童数・中学校生徒数・幼稚園在園者数の推移(1980年〜2024年)
毎年の値/単位は人
小学校(青)は1980年の10万1,517人から2000年の6万3,108人まで38%減ったあと、反転して2024年は7万4,486人。きれいなV字です。
中学校(赤)は1985年の4万7,478人がピーク。2000年前後に2万8,858人まで落ち、いまは3万3,782人まで戻しています。小学校より約5年遅れて同じ形を描きます。
幼稚園(緑)だけが一貫した右肩下がりで、直近5年はとくに急です。これは少子化ではなく、保育所への移行が理由です。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」(学校基本調査)をもとに作成
学校数の推移(1980年〜2024年)
小学校・中学校・幼稚園の施設数
いっぽう幼稚園は120園から78園へ42園減少。とくに2000年代前半に急減しています。公立の小中学校は維持され、私立中心の幼稚園が市場から退出した——この対比が、川崎市の教育インフラの姿です。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」をもとに作成
1校あたりの児童数(小学校)
小学校児童数 ÷ 小学校数
ピーク時の6割程度で落ち着いていますが、直近は再び増加傾向にあります。ビジネスへの示唆:学校規模が再び膨らむと、学童保育、給食、教材、施設改修といった学校まわりの需要が伸びます。とくに中原区・高津区のように人口が増えた区では、教室不足への対応が続いています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の小学校児童数(最新年)
単位は人
逆に麻生区は少ない。65歳以上が24.1%と7区で最も高齢化が進んだ区で、子育て世帯の比率が低いためです。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」をもとに作成
解説:少子化の街ではなかった
全国とは逆の曲線
全国の小学校児童数は1981年の1,192万人をピークに減り続け、いまは600万人を割り込んでいます。40年で半分です。
川崎市も1980年から2000年までは同じ方向でした。10万1,517人から6万3,108人へ、37.8%の減少。ところがそこから反転します。2005年6万8,061人、2010年7万1,982人、2015年7万3,363人、2024年7万4,486人。底から1万1,378人(+18.0%)増えました。
理由は「人口の推移」のページで見たとおりです。この時期、川崎市には武蔵小杉をはじめとする大規模マンションが供給され、子育て世代が大量に流入しました。全国が少子化で縮むなか、川崎は転入によって子どもの数を取り戻したことになります。
中学校も同じ形を、約5年遅れでたどっています。小学生だった世代がそのまま中学生になるためです。
学校を減らさなかった街
もうひとつ特徴的なのが、学校数です。児童数が4割近く減った1980年から2000年のあいだに、川崎市は小学校を102校から118校へ16校増やしています。中学校も50校から57校へ。
全国では同じ時期に統廃合が進みました。児童が減れば学校を減らす、というのが一般的な対応です。川崎市がそうしなかったのは、市全体の人口が増え続けていたからです。児童数は減っても、住宅開発によって新しい地域に子どもが生まれ、そこに学校が必要になりました。
結果として、いま川崎市は「児童数が回復したのに、学校数も十分にある」という珍しい状態にあります。1校あたり児童数は631人。ピーク時の995人に比べればまだ余裕がありますが、2000年の535人からは確実に増えています。
幼稚園だけが減り続けた
この45年でもっとも劇的に減ったのは幼稚園です。在園者数は2万7,044人から1万1,791人へ56.4%減。園数も120園から78園へ、42園減りました。
これは少子化ではありません。同じ期間に保育所は107所から300所へ増え、在所児は9,356人から2万3,884人へ2.6倍になっています(「保育所の定員と待機児童数」のページ参照)。子どもの絶対数は回復しているのに、行き先が幼稚園から保育所へ移ったのです。
背景は共働き世帯の増加です。幼稚園は基本的に昼過ぎまでの預かり、保育所は夕方まで。両親ともに働く世帯が増えれば、必然的に保育所が選ばれます。とくに川崎市は「通勤・通学の流動」で見たとおり市民の4割が東京へ通勤する街で、通勤時間の長さが預かり時間の要求を強めます。
中小企業への示唆
1. 子ども向け市場は縮んでいない——川崎市の小学生は7万4,486人で、20年前より1万人以上多い。学習塾、習い事、スポーツクラブ、子ども向け商材は、全国の縮小トレンドとは別の市場です。
2. 学校まわりの需要は続く——118校の小学校と58校の中学校。給食、清掃、警備、教材、施設改修、ICT機器。児童数が増加傾向にあるいま、教室増設やリニューアルの需要は当面続きます。
3. 幼稚園業界は縮小、保育業界は拡大——42園が消えた一方で保育所は193所増えました。この分野の事業者(給食、送迎、清掃、人材)にとって、市場の重心は完全に移っています。
4. エリアで市場規模が違う——児童数が多いのは中原区・高津区。麻生区・多摩区は相対的に少ない。子ども向けの店舗や教室の立地を考えるなら、この差は無視できません。
データの注意点
数値は学校基本調査(毎年5月1日現在)によるもので、国公私立の合計です。市内に所在する学校の児童生徒数であり、市外から通学してくる児童生徒を含み、市外の学校に通う川崎市民の子どもは含みません。
2016年度から義務教育学校(小中一貫校)の制度が始まっており、その児童生徒は小学校・中学校の数値と別に集計されています。このページのグラフには含めていないため、実際の小中学生の総数はわずかに多くなります。