川崎市の保育所の数と在所児数

幼稚園が半減するあいだに、保育所は3倍近くに。預け先が入れ替わりました。

このページの要点

① 保育所は37年で2.8倍。1980年の107所から2017年の300所へ。在所児数も9,356人から2万3,884人へ2.6倍になりました。

② 増えたのは2008年以降。1980年から2003年までの23年間はほぼ横ばい(107所→113所)でした。ところが2008年135所、2013年205所、2017年300所と、直近10年で急増しています。

③ 公営は逆に減った。公営保育所は2003年の88所から2017年の36所へ。増えた分はすべて民間です。数を増やしたのは民間事業者でした。

保育所はどう増えたか

保育所等数と在所児数の推移(1980年〜2017年)

棒が保育所等数(左軸・所)、折れ線が在所児数(右軸・人)

読み方:1980年から2003年までの23年間、保育所の数はほとんど変わっていません(107所→113所)。ところが2008年135所、2013年205所、2017年300所と、直近の10年ほどで一気に増えました。
在所児数も同じ形です。2003年の1万1,255人から2017年の2万3,884人へ、14年で2.1倍。
この時期は「人口の推移」のページで見た人口急増期と重なります。武蔵小杉をはじめとする大規模マンションに子育て世代が流入し、保育需要が一気に膨らんだ結果です。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」(社会福祉施設等調査)をもとに作成

公営保育所と民営保育所の数(2000年〜2017年)

積み上げ棒/公営と、それ以外(民間)の内訳

読み方:公営保育所は2000年前後の88所前後をピークに、2017年には36所まで減りました。いっぽう民間は同じ期間に25所前後から264所へ、10倍以上に増えています。
保育所の総数が2.7倍になったこの期間、増加分はすべて民間が担いました。公立を民営化しつつ、新設は民間に任せる——多くの自治体がとった方針が、川崎でもそのまま数字に出ています。
ビジネスへの示唆:市内の保育所264所が民間事業者です。給食、送迎、清掃、おむつ、教材、ICT、人材紹介——これらの発注先は行政ではなく、個々の民間事業者になります。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」をもとに作成

1か所あたりの在所児数

在所児数 ÷ 保育所等数(人)

読み方:1980年代は1か所あたり87人前後。それが2017年には80人まで下がっています。
数字としては小さな変化ですが、意味は大きい。施設数が2.8倍になるあいだ、1か所あたりの規模はむしろ小さくなりました。大きな保育所を少数つくるのではなく、小規模な施設を数多く配置する方向に舵が切られたということです。小規模保育事業や認定こども園など、多様な形態が制度化された影響と考えられます。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」をもとに作成

7区でどう違うか

区別の保育所等数と在所児数(最新年)

棒が保育所等数(左軸)、折れ線が在所児数(右軸)

読み方:保育所が多いのは、子育て世代が集まる区です。「人口ピラミッド」のページで20〜39歳の割合が7区で最も高かった中原区(31.9%)と、人口が最も多い区が上位に来ます。
逆に麻生区は少ない。65歳以上が24.1%と7区でもっとも高齢化が進んだ区で、就学前の子どもの絶対数が少ないためです。

出典:総務省「社会・人口統計体系(J 福祉・社会保障)」をもとに作成

解説:預け先が入れ替わった

幼稚園と保育所が入れ替わった

このページの数字は、「児童生徒数・学校数の推移」のページと合わせて読むと意味がはっきりします。

同じ期間(1980年→直近)に、川崎市では次のことが起きました。

・幼稚園:120園 → 78園(−42園)/在園者 2万7,044人 → 1万1,791人(−56.4%)
・保育所:107所 → 300所(+193所)/在所児 9,356人 → 2万3,884人(+155%)

幼稚園で減った在園者は約1万5,000人、保育所で増えた在所児は約1万4,500人。ほぼ同じ規模で入れ替わっています。子どもの数が減ったのではなく、預け先が変わったのです。

理由は共働き世帯の増加です。幼稚園は昼過ぎまで、保育所は夕方まで。両親ともに働く世帯にとって、選択肢は限られます。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、川崎市民の4割は他県へ通勤しており、往復の通勤時間を含めれば、幼稚園の預かり時間では足りません。

増やしたのは民間だった

もうひとつの変化が、担い手です。公営保育所は2003年の88所から2017年の36所へ、52所減りました。同じ期間に総数は113所から300所へ187所増えています。

つまり民間は25所前後から264所へ、10倍以上に増えたことになります。急増する保育需要を、行政ではなく民間事業者が引き受けたということです。

この構造は、市場としての性格を決めます。市内の保育所の9割近くが民間事業者であり、備品・食材・サービスの発注は個々の事業者が判断します。行政の一括調達ではありません。264の独立した顧客がいる市場という見方ができます。

施設は小さくなった

1か所あたりの在所児数は、1980年代の87人前後から2017年の80人へ、わずかに減っています。施設数が2.8倍になったにもかかわらず、1施設あたりは大きくなっていません。

これは意図的な政策の結果です。大規模保育所を少数つくるより、駅前やマンションの一角に小規模な施設を数多く配置したほうが、通勤途中に預けやすい。2015年の子ども・子育て支援新制度で小規模保育事業が正式に位置づけられたことも後押ししました。

中小企業への示唆

1. 保育所は300の事業所からなる市場——「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、医療・福祉は市内で従業者数2位(8万5,460人)の産業です。そのうち保育がかなりの部分を占めます。給食、送迎バス、清掃、リネン、玩具・教材、ICT、防犯——BtoBの取引先として、まとまった規模があります。

2. 人材が最大の課題——保育所が300所に増えたということは、保育士の需要も同じ比率で増えたということです。「開業率・廃業率」のページでも医療・福祉は5年間で609事業所の純増と全業種トップでした。人材紹介・派遣、研修、労務管理の需要は今後も続きます。

3. ただし需要は頭打ちに近づく——「人口の推移」のページで見たとおり、2020年から2025年の人口増加率は+1.5%まで鈍化しています。保育需要の急拡大期は、そろそろ終わりに近づいている可能性があります。この分野へこれから参入するなら、拡大ではなく既存施設の運営効率化を軸に考えたほうが現実的です。

データの注意点

数値は社会福祉施設等調査によるもので、このデータベースでは2017年までしか収録されていません。それ以降の状況は川崎市が公表する「保育所等利用申請・利用状況」で確認できます。待機児童数についても、市の公表資料が一次情報になります。

「保育所等」には認可保育所のほか、認定こども園や小規模保育事業などが含まれます。年によって集計対象が変わっている可能性があるため、長期の比較は傾向として読んでください。

公営保育所の数は2000年以降のみ収録されています。それ以前の公営・民営の内訳はこのデータからは分かりません。