このページの要点
① 大学・大学院卒が33.7%で政令市20市の1位。2位の横浜市(32.1%)、3位のさいたま市(31.2%)を上回ります。最下位の北九州市(18.1%)とは15.6ポイントの差です。
② 20年で8.3ポイント上昇した。2000年の25.4%(250,294人)から2020年の33.7%(405,730人)へ。人数では62.1%増えています。
③ 所得の高さと一致する。「政令指定都市20市 データ比較」で見た納税者1人あたり課税対象所得は20市で2位(459.3万円)。学歴構成と所得水準は、ほぼ同じ順位で並びます。
20年間の変化
最終学歴の構成比(2000年・2010年・2020年)
15歳以上の卒業者に占める割合/国勢調査
小学校・中学校卒は14.7%から6.3%へ半分以下に。高齢世代の入れ替わりが進んだ結果です。
大学・大学院卒は25.4%から33.7%へ8.3ポイント上昇。いっぽう高校・旧中卒は38.9%から24.8%へ14.1ポイント下がりました。
「高卒が最多」から「大卒が最多」へ、この20年で逆転しています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」(国勢調査)をもとに作成
大学・大学院卒の人数と割合
棒が人数(左軸・人)、折れ線が卒業者に占める割合(右軸・%)
同じ期間に卒業者総数は983,803人から1,204,970人へ22.1%増です。全体の伸びを大きく上回るペースで大学卒が増えたことになります。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
大学・大学院卒の割合ランキング(2020年)
川崎市を濃い色で表示
いっぽう大阪市(20.1%・17位)や札幌市(20.0%・18位)といった大都市が下位に沈んでいます。大学が多い都市が上位になるわけではないという点は注目に値します。
大学は学生を集めますが、卒業後にその街に住み続けるとは限りません。この指標が示すのは「大学がある街」ではなく「大卒者が住む街」です。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」をもとに作成
学歴と所得の関係
横軸が大学・大学院卒の割合(%)、縦軸が納税者1人あたり課税対象所得(万円)
川崎市(赤い点)は右端にあり、所得も上位です。すぐ左上に横浜市があり、この2市が右上のかたまりを作っています。
ただし例外もあります。大阪市は大卒率20.1%(17位)ながら所得394.2万円と中位。京都市も大卒率25.3%(11位)に対し所得422.1万円(5位)です。学歴だけで所得が決まるわけではありません。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育/C 経済基盤)」をもとに作成。学歴は2020年、所得は2024年度の値です。
市内の高校
高等学校数と生徒数の推移(1980年〜2024年)
棒が生徒数(左軸・人)、折れ線が学校数(右軸・校)
いっぽう学校数は25〜28校でほぼ横ばい。学校の数は変わらず、1校あたりの生徒が減ったことになります。1990年の1校あたり1,343人が、2024年には863人です。
出典:総務省「社会・人口統計体系(E 教育)」(学校基本調査)をもとに作成
解説:大卒者が住む街
3人に1人が大学・大学院卒
2020年の国勢調査によれば、川崎市の15歳以上の卒業者1,204,970人のうち、最終学歴が大学・大学院の人は405,730人。33.7%にあたります。おおよそ3人に1人です。
この割合は政令指定都市20市で1位。2位の横浜市(32.1%)、3位のさいたま市(31.2%)が続き、上位3市はすべて東京圏の都市です。最下位の北九州市(18.1%)とは15.6ポイントの差があります。
20年間の変化も大きい。2000年は25.4%(250,294人)でしたから、8.3ポイント、人数では15万5千人増えました。同じ期間に「高校・旧中」卒は38.9%から24.8%へ14.1ポイント下がっています。「高卒が最多」だった街が、20年で「大卒が最多」の街になりました。
大学がある街ではなく、大卒者が住む街
注意したいのは、この指標が「大学の多さ」を表すものではないという点です。
京都市は大学の街として知られますが、大卒率は25.3%で11位。大阪市は20.1%で17位、札幌市は20.0%で18位です。大学が多い都市が上位に来るわけではありません。
大学は学生を集めますが、卒業した人がその街に住み続けるとは限りません。この指標が測っているのは「大卒者が住まいとして選ぶ街かどうか」です。
川崎市が1位である理由は、「通勤・通学の流動」のページで見たとおりです。市民の41.9%は他県(ほぼ東京)で働いています。東京都心のオフィスワークに従事する層が、通勤圏として川崎を選ぶ。川崎の学歴構成は、東京の労働市場を映した鏡だといえます。
所得との関係
この数字は所得と密接に関係します。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見たとおり、川崎市の納税者1人あたり課税対象所得は459.3万円で20市中2位。散布図に置くと、大卒率と所得はきれいな右上がりの関係を描きます。
そして、この2つが揃うことが「市税収入の内訳」のページで見た財政構造につながります。市民税が22年で88%増え、固定資産税を追い抜いて市税の主役になった。学歴 → 所得 → 市民税という連鎖が、川崎市の財政力指数1.02(20市で唯一の1.0超)を支えています。
いっぽうで、この構造は「ふるさと納税による流出額」のページで見たリスクとも表裏です。市民税に依存する財政ほど、ふるさと納税による流出の影響を受けます。所得が高く情報感度の高い層が多いことは、制度の利用率の高さ(市民の15.1%が利用・上位政令市で最高)にもつながっています。
中小企業への示唆
1. 価格より価値で選ばれる市場——大卒率1位、所得2位という組み合わせは、価格競争が効きにくい市場を意味します。「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見たとおり、川崎市民の購買力は大きく市外へ流出しています。安さで都心に勝てない以上、専門性・利便性・信頼で選ばれる商売のほうが川崎には合います。
2. 情報の届き方が違う——高学歴層はネットで比較検討し、口コミを重視し、根拠のある説明を求めます。チラシの一枚絵より、きちんとした情報発信のほうが効きます。
3. 採用市場としての質——「就業者数・失業率・女性就業」のページで見たとおり、川崎市の完全失業率3.26%は20市で最低です。求職者は少ないが、その質は高い。採用は難しいが、採れれば戦力になる市場です。給与以外の条件(通勤時間、働き方の柔軟性)で差別化する価値があります。
4. BtoBサービスの需要——高学歴層が多いということは、専門サービスの担い手も多いということです。「開業率・廃業率」のページで見たとおり、学術研究・専門技術サービス業の開業率は43.6%で市内2位でした。士業、コンサルティング、IT——こうした事業の起業が起きやすい土壌があります。
データの注意点
最終学歴の数値は国勢調査によるもので、収録は2000年・2010年・2020年の3時点のみです。5年ごとの中間年(2005年・2015年)はこのデータベースには収録されていません。
対象は15歳以上の卒業者です。在学中の人や未就学の人は含みません。また「短大・高専」には専修学校の専門課程が含まれる場合があり、集計区分は調査年によって多少変わります。
学歴と所得の散布図は、学歴が2020年、所得が2024年度の値です。4年のずれがあります。また相関があることは、因果関係を意味しません。
高等学校数・生徒数は市内に所在する高校の数値で、市民が通う高校とは一致しません。川崎市から東京都や横浜市の高校へ通う生徒も多くいます。