このページの要点
① 大学・大学院卒率は東京23区より高い。川崎市33.7%に対し、東京都特別区部32.1%、横浜市32.1%。6都市で1位です。
② 高齢化率も1位、財政力指数も最高。高齢化率20.2%は23区(21.5%)より低く、財政力指数1.02はデータのある5都市で唯一の1.0超です(東京都特別区部は都区財政調整制度のため、この指標が算定されません)。
③ ところが2つの指標で最下位。昼夜間人口比率87.3%と、1人あたり小売販売額75.2万円。どちらも6都市でもっとも低い数字です。
6都市を並べて見る
出典:総務省「社会・人口統計体系(市区町村データ 基礎データ)」/「令和2年国勢調査」/「令和7年国勢調査 速報集計」をもとに作成
川崎市はどこに位置するか
6都市の性格くらべ
8つの指標を、6都市のなかでの相対位置(0〜100)に直して重ねています
川崎市の形の特徴は、大卒率と年少人口比率で外側に張り出し、昼夜間人口比率と小売販売額で内側に凹むこと。「住む人の質は高いが、街としての集客力は低い」という形になっています。
東京都特別区部を選ぶと、ほぼ逆の形が出ます。
出典:総務省「社会・人口統計体系」ほかをもとに作成
稼ぐ場所と、使う場所
所得と小売販売額の関係
横軸が納税者1人あたり課税対象所得(万円)、縦軸が市民1人あたり小売販売額(万円)
川崎市は右下。所得は459.3万円で3位と高いのに、小売販売額は75.2万円で最下位。所得と消費の乖離が6都市でもっとも大きいのが川崎市です。
この構図は「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見た政令市20市の比較とまったく同じです。範囲を東京圏に絞っても、結論は変わりません。
出典:総務省「社会・人口統計体系」をもとに作成。所得は2024年度、販売額は2020年の値です。
13指標の一覧表
解説:東京圏のなかの川崎
23区より大卒率が高い
このページでもっとも意外な数字がこれです。川崎市の大学・大学院卒率33.7%は、東京都特別区部の32.1%を1.6ポイント上回ります。横浜市も32.1%、さいたま市31.2%。6都市で川崎市が1位です。
「市民の最終学歴」のページで見たとおり、川崎市は政令指定都市20市でも大卒率1位でした。東京圏に範囲を絞っても、その位置は変わりません。
高齢化率20.2%も6都市で最低。23区(21.5%)より若い街です。財政力指数1.02は、データのある5都市で唯一の1.0超(東京都特別区部は都区財政調整制度のため算定されません)。「住んでいる人」で測る指標では、川崎市は東京圏の頂点に立っています。
それなのに、2つの指標で最下位
ところが同じ6都市で、川崎市が最下位になる指標が2つあります。
昼夜間人口比率87.3%——2位の相模原市(88.9%)より低く、1位の東京都特別区部(126.8%)とは39.5ポイントの差。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、昼になると19万6千人が市外へ出ていきます。
1人あたり小売販売額75.2万円——相模原市(82.8万円)より低く、東京都特別区部(158.3万円)の47%。半分以下です。
この2つは無関係ではありません。市民の4割が東京で働けば、買い物の相当部分も東京でされます。通勤の流れと購買力の流れは、同じ経路をたどります。
所得と消費の乖離が最大
散布図に置くと、この構図がもっとも鮮明になります。
東京都特別区部は右上——所得も消費も高い。稼ぐ場所であり、使う場所でもあります。千葉市は所得429.0万円(4位)に対し小売販売額119.2万円(2位)で、所得の割によく使われている都市です。
川崎市は右下に位置します。所得459.3万円で3位という高さに対し、小売販売額は75.2万円で最下位。6都市のなかで、所得と消費の乖離がもっとも大きいのが川崎市です。
「卸売・小売業の年間商品販売額」のページでは、政令指定都市20市を対象に同じ分析をしました。そこでも川崎市は最下位でした。比較の範囲を東京圏に絞っても、結論は変わりません。これは川崎市の構造的な特徴だということです。
横浜市との違い
隣の横浜市と比べると、川崎市の特徴がより明確になります。
所得はほぼ同じ(横浜463.0万円、川崎459.3万円)。大卒率も横浜32.1%、川崎33.7%と近い。ところが1人あたり小売販売額は横浜101.8万円、川崎75.2万円で26.6万円の差があります。昼夜間人口比率も横浜92.5%に対し川崎87.3%。
横浜市は人口375万人を抱える巨大都市で、みなとみらいや横浜駅周辺という大きな商業集積を持ちます。周辺市町村から人を集める側にも回れる規模です。いっぽう川崎市は東京と横浜という2つの大商圏に挟まれ、市域も細長い。同じ「東京のベッドタウン」でも、規模が生む違いがあります。
中小企業への示唆
1. 顧客の質は東京圏でトップクラス——大卒率1位、所得3位、高齢化率の低さ1位。購買力と情報感度の高い層が住んでいます。価格ではなく価値で選ばれる商売に向いた市場です。
2. ただし「集客」では勝負しない——昼夜間人口比率も小売販売額も6都市最下位。人を集めて売る商売は、23区や横浜と正面から競合します。「わざわざ来てもらう」のではなく「近いから使ってもらう」設計のほうが川崎には合います。
3. 夜と休日が勝負時間——昼間に19万6千人減る街です。平日昼をメインにした業態は、他都市より不利になります。逆に平日夜・土日は人が戻ります。
4. 相模原市とは違う——同じ「東京圏の政令市」でも、相模原市は所得385.5万円(6位)、大卒率24.4%(6位)と川崎市とは層が違います。「東京圏だから同じ」という括りは危険です。
データの注意点
指標によって年が異なります。総人口は2025年、年齢構成・世帯・学歴・昼夜間人口は2020年、住宅は2023年、所得は2024年度、財政力指数は2022年度、小売販売額は2020年の値です。
東京都特別区部は23区の合計です。区ごとの差は大きく、たとえば港区と足立区では所得水準がまったく違います。この比較は「23区全体の平均」であり、個々の区とは異なる点にご注意ください。
また特別区は市とは制度が異なります。とくに財政力指数は東京都特別区部には存在しません。特別区の財源は都区財政調整制度によって東京都から配分される仕組みで、市町村のように単独で財政力指数を算定しないためです。表では「—」と表示し、レーダーチャートの指標からも外しています。
1人あたり小売販売額の分母は2020年の人口です。「卸売・小売業の年間商品販売額」のページと同じ計算方法を用いています。