このページの要点
① 商業事業所は40年で半減した。1982年の13,058か所から2021年の6,353か所へ、−51.3%。小売業だけでも2002年の8,458店から2021年の4,962店へ減っています。
② 1事業所あたりの販売額は4.4倍に。1982年の1億1,309万円から2021年の5億286万円へ。店の数が減った分、1店あたりの規模が大きくなりました。
③ 1店舗あたり売場面積は区で1.9倍の差。高津区217.8m²に対し、多摩区は115.7m²。同じ市内でも「大型店の街」と「小型店の街」に分かれています。
店の数の推移
商業事業所数の推移(1982年〜2021年)
卸売業+小売業/調査ごとに線を分けています
減少がとくに大きいのは1991年(12,791)から2007年(9,105)にかけての16年間で、バブル崩壊後の商店の廃業とコンビニ・大型店への集約が進んだ時期にあたります。
出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」をもとに作成
小売業の事業所数(2002年〜2021年)
小売業のみ/調査ごとに線を分けています
2016年に5,332店へ増えたあと2021年に4,962店へ減っているのは、コロナ禍を挟んだ影響が考えられます。
出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」をもとに作成
1事業所あたりの規模は大きくなった
1事業所あたりの年間商品販売額(1982年〜2021年)
年間商品販売額 ÷ 事業所数/単位は万円。販売額はその調査の前年(2011年以降は同年)の実績です
店の数は半分に減り、1店あたりの取扱額は4倍以上に。商業の集約が、金額の面ではっきり出ています。
ビジネスへの示唆:取引先としての小売店は「数は減り、1社は大きくなる」方向にあります。卸売やメーカーの営業にとっては、訪問先の母数が細り、1件あたりの重みが増しているということです。
出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」をもとに作成
売場面積で見る(2020年)
区別の1店舗あたり売場面積
小売業の売場面積 ÷ 小売業の事業所数/点線は市平均(177.6m²)
大きい区は幹線道路沿いのロードサイド型の大型店が多く、小さい区は駅前の商店街や小型店が中心という違いを映しています。多摩区の115.7m²は、登戸・向ヶ丘遊園まわりに小さな店が並ぶ姿そのものです。
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成
業種別の1店舗あたり売場面積と販売額(川崎市)
棒が1店舗あたり売場面積(左軸・m²)、折れ線が1店舗あたり年間販売額(右軸・万円)
いっぽう店舗数が最も多いのは「その他の小売業」(1,803店)と飲食料品小売業(1,752店)で、1店舗あたり売場は135.5m²・168.7m²。数の主役は小型店、金額の主役は大型店という構造です。
無店舗小売業(212店・1店舗あたり2億8,574万円)は売場を持たないため、面積のグラフには表示されていません。売場なしで飲食料品店を上回る販売額を上げている点は注目に値します。
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成
解説:店が減ることの意味
40年で半分になった
川崎市の商業事業所(卸売業+小売業)は、1982年に13,058か所ありました。2021年は6,353か所。51.3%減、ちょうど半分です。
ただしこの数字はそのまま受け取れません。2007年と2011年のあいだで調査が商業統計調査から経済センサスに変わり、事業所の捉え方が変わっているためです。同じ調査で追える1982〜2007年に限っても13,058→9,105と30.3%減っており、減少そのものは間違いありません。
減少がとくに急だったのは1991年から2007年です。バブル崩壊後の消費低迷、大規模小売店舗法の規制緩和による大型店の出店、コンビニエンスストアの拡大——個人商店が畳まれ、チェーン店に置き換わっていった時期がそのまま出ています。
減ったのに、金額は増えた
興味深いのは、事業所が半減しても販売額は減っていないことです。1事業所あたりの年間商品販売額は、1982年の1億1,309万円から2021年の5億286万円へ、4.4倍になりました。
物価の変動を考慮しても、この伸びは大きい。つまり川崎の商業は「縮んだ」のではなく「集約された」のです。小さな店が多数あった状態から、大きな店が少数ある状態へ。扱う金額の総量は保ったまま、担い手の数だけが減りました。
これは「事業所数・従業者数の推移」のページで見た全産業の傾向と同じです。ただし商業の集約度合いは、全産業平均よりはるかに大きい。全産業の1事業所あたり従業者数が40年で1.3倍だったのに対し、商業の1事業所あたり販売額は4.4倍です。
大型店の街と、小型店の街
2020年の1店舗あたり売場面積を区別に見ると、高津区の217.8m²から多摩区の115.7m²まで、1.9倍の開きがあります。
高津区・宮前区・麻生区が大きいのは、幹線道路沿いのロードサイド型店舗が多いためでしょう。逆に多摩区・中原区が小さいのは、駅前に小型店が密集する構造を反映しています。「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見た1m²あたり販売額では多摩区が152.6万円と高かったことを思い出すと、多摩区は「小さい店が、狭い売場で効率よく売っている」区だと言えます。
この違いは出店戦略に直結します。ロードサイドの大型区画を探すなら高津・宮前・麻生。駅前の小型区画で回転を狙うなら多摩・中原。同じ市内でも、成立する店の形が違います。
売場を持たない小売が育っている
2020年時点で、無店舗小売業(通信販売・ネット販売など)は市内に212店あり、1店舗あたりの年間販売額は2億8,574万円。これは飲食料品小売業(2億6,209万円)を上回り、機械器具小売業(4億1,629万円)に次ぐ水準です。
店舗数では小売業全体の4.3%にすぎませんが、1店舗あたりの生産性では上位に食い込んでいます。売場面積という制約から解放されたビジネスモデルが、すでに実績として数字に表れているということです。
「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見たとおり、川崎市民の購買力は大きく市外に流出しています。売場を持たない販売は、その流出に地理の制約を受けずに立ち向かえる数少ない手段です。市内小売業者にとって、無店舗小売はまだ開拓の余地が大きい領域といえます。
データの注意点
事業所数は調査によって捉え方が異なります。1982〜2007年は商業統計調査、2011年以降は経済センサスによるもので、系列をまたいだ増減率は計算できません。グラフで線を分けているのはこのためです。
また、年間商品販売額はその調査の前年の実績です(2011年以降は調査年と同じ年)。1事業所あたり販売額のグラフは、同じ調査回の事業所数と販売額を対応させて計算しています。
売場面積は小売業のみの数値で、卸売業と無店舗小売業には売場面積の概念がありません。2020年の断面のみで、時系列の比較はできません。