このページの要点
① 二人以上世帯の消費支出は月32万8,314円(2024年)。世帯人員2.9人、世帯主の平均年齢59.1歳の世帯です。
② 最大の費目は食料の9万4,703円(28.8%)。エンゲル係数28.8%は、2022年の28.0%から0.8ポイント上がりました。
③ 勤労者世帯の実収入は月76万2,089円。消費支出36万4,836円を差し引くと39万7,253円が残る計算ですが、ここから税・社会保険料が引かれます。
何にいくら使っているか
費目別の消費支出(2024年)
二人以上の世帯・1世帯あたり1か月間/消費支出32万8,314円の内訳
「その他の消費支出」には、こづかい、交際費、仕送り金などが含まれます。
住居費が8.8%と低く見える点に注意が必要です。家計調査の「住居」には持ち家の住宅ローン返済が含まれません。「消費者物価地域差指数」のページで見たとおり、川崎の物価が政令市1位なのは家賃が理由でしたが、その負担はこの数字には表れにくいのです。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第9章 Ⅸ-6(原資料:総務省統計局「家計調査」)をもとに作成
3年の推移(2022年〜2024年)
費目別の金額(円)/集計世帯数は88〜90世帯
とくに食料が8万5,493円から9万4,703円へ10.8%増。金額でも9,210円ともっとも大きな増加です。物価上昇がそのまま出ています。
ただし集計世帯数は89世帯しかありません。世帯人員も2.86人→2.66人→2.90人と年ごとに動いており、比較する世帯の中身が違います。「3年で7.3%増えた」という数字を、そのまま物価上昇率として読むことはできません。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第9章 Ⅸ-6をもとに作成
エンゲル係数
消費支出に占める食料費の割合(%)
エンゲル係数は高いほど家計に余裕がないとされる指標です。ただし近年は、高齢化・単身化・調理済み食品の利用増によっても上がることが知られています。
「消費者物価地域差指数」のページで見たとおり、川崎市の食料の物価指数は101.7で政令市中位。食費が高いから係数が高い、という説明にはなりません。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第9章 Ⅸ-6をもとに作成
勤労者世帯の収入
実収入と消費支出(2022年〜2024年)
二人以上の勤労者世帯・1世帯あたり1か月間/集計世帯数は50前後
消費支出は31万4,827円から36万4,836円へ15.9%増。収入の伸び(7.4%)を大きく上回っています。
ただし集計世帯数は50世帯。世帯人員も3.24人→2.95人→3.26人と動いており、この差を「家計が苦しくなった」と読むのは危険です。
「賃金・労働時間」のページで見たとおり、神奈川県の所定内給与額は月38万7,900円(男性)。実収入76万円は、共働きと賞与を含んだ額だと考えられます(有業人員1.78人)。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第9章 Ⅸ-6その2をもとに作成
解説:89世帯から見た川崎
まず、この統計の限界から
家計調査は、全国から約9,000世帯を選んで家計簿をつけてもらう調査です。都道府県庁所在市と政令指定都市については市別の結果も公表されます。
ただし川崎市に割り当てられている世帯数は、二人以上の世帯で89世帯、勤労者世帯で50世帯(2024年)。人口154万人の市を、この数で代表させていることになります。
標本誤差はかなり大きく、年ごとの増減の多くは誤差の範囲と考えるべきです。世帯人員も2.86人→2.66人→2.90人と年によって動いており、比較している世帯の中身自体が違います。
このページではおおまかな水準と構成だけを読み取ります。
月32万8,314円の内訳
2024年、川崎市の二人以上世帯の消費支出は月32万8,314円でした。世帯人員2.9人、有業人員1.37人、世帯主の平均年齢59.1歳の世帯です。
内訳でもっとも大きいのは食料の9万4,703円(28.8%)。次いでその他の消費支出5万2,886円(16.1%)、交通・通信4万2,106円(12.8%)、教養娯楽3万4,947円(10.6%)、住居2万8,772円(8.8%)。
「その他の消費支出」には、こづかい、交際費、仕送り金などが含まれます。分類しにくい支出の受け皿で、金額が大きくなりやすい費目です。
住居費8.8%をどう読むか
ここで注意したいのが住居費の低さです。2万8,772円、消費支出の8.8%。
「消費者物価地域差指数」のページで見たとおり、川崎市の物価水準104.2は政令指定都市20市で1位。その原因はほぼ家賃でした。総合104.2に対して家賃を除くと102.6で、1.6ポイントの差があります。
それなのに家計調査の住居費が8.8%にとどまるのは、持ち家世帯の住宅ローン返済が「住居」に含まれないためです。家計調査ではローン返済は消費支出ではなく、資産の取得として扱われます。
「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、川崎市の一戸建て比率は24.2%と低いものの、持ち家世帯は一定数あります。実際の住居負担は、この8.8%より大きいと考えるべきです。
食費が3年で9,210円増えた
3年の変化でもっとも大きいのは食料です。8万5,493円から9万4,703円へ、9,210円(10.8%)増。
エンゲル係数は2022年28.0%、2023年27.2%、2024年28.8%。3年で0.8ポイント上がりました。
エンゲル係数は「高いほど家計に余裕がない」とされる古典的な指標ですが、近年は解釈が難しくなっています。高齢化、単身化、調理済み食品や外食の利用増によっても上がるためです。世帯主の平均年齢が59.1歳というこの統計の対象を考えると、その影響も含まれるでしょう。
「消費者物価地域差指数」のページで見たとおり、川崎市の食料の物価指数は101.7で政令市中位(7位)。「川崎は食費が高いからエンゲル係数が高い」という説明は成り立ちません。
勤労者世帯は月76万円
勤労者世帯(世帯主が会社員などの世帯)に絞ると、収入がわかります。
2024年の実収入は月76万2,089円。うち勤め先収入が71万2,633円で93.5%を占めます。世帯人員3.26人、有業人員1.78人、世帯主の平均年齢48.9歳。
「賃金・労働時間」のページで見たとおり、神奈川県の所定内給与額は男性で月38万7,900円。実収入76万円という数字は、共働き(有業人員1.78人)と賞与を含んだ額だと考えられます。
消費支出は36万4,836円。差し引き39万7,253円ですが、ここから税金と社会保険料が引かれます。
3年の変化を見ると、実収入は+7.4%、消費支出は+15.9%。支出の伸びが収入を大きく上回っています。ただし集計世帯数50世帯、世帯人員も年ごとに動いており、この差を家計の悪化と断定することはできません。
中小企業への示唆
1. 川崎の家計は月33万円を消費に回している——うち食料9.5万円、交通・通信4.2万円、教養娯楽3.5万円。市内54万世帯にかけると、市場の概算がつかめます。
2. 「その他の消費支出」5.3万円が読みにくい——こづかい、交際費、仕送り。費目として捉えにくいぶん、参入余地も見えにくい領域です。
3. 食費の伸びは価格転嫁の余地——3年で10.8%増。食に関わる商売では、値上げが受け入れられていることを示しています。ただし数量が減っている可能性もあります。
4. 世帯主59歳という前提——この統計が映しているのは、川崎市の平均ではなく「二人以上の世帯」の平均です。「住民基本台帳の人口・世帯数」で見たとおり、川崎市の1世帯あたり人員は1.95人。単身世帯を含めた実態は、この統計には出てきません。
5. 89世帯の数字である——事業計画の根拠に使うときは、この点を必ず添えてください。
データの注意点
集計世帯数は二人以上の世帯で88〜90世帯、勤労者世帯で50〜51世帯です。標本誤差が大きく、年ごとの細かい増減は誤差の範囲に入ります。
対象は二人以上の世帯です。単身世帯は含まれません。「住民基本台帳の人口・世帯数」のページで見たとおり、川崎市の1世帯あたり人員は1.95人で、単身世帯が多数を占めます。この統計は川崎市の世帯の平均像ではありません。
「住居」には持ち家の住宅ローン返済が含まれません。家賃・地代と設備修繕・維持のみです。また「自動車等購入」「贈与金」なども、統計書の注記により消費支出の一部として扱いが異なる場合があります。
収録されているのは令和4〜6年(2022〜2024年)の3年分だけです。それ以前にさかのぼるには、川崎市統計書の過去の版を確認する必要があります。
金額はすべて1世帯あたり1か月間の円です。年間ではありません。
10大費目の合計は消費支出と一致することを確認しています(2024年で32万8,314円)。