飲食店の数と密度

30年で4割減りました。人口は増えているのに。

このページの要点

① 飲食店は1991年の7,280店をピークに、2021年は4,190店。30年で3,090店、42.4%減りました。

② 人口1万人あたりでは20年で46.2%減。2001年の52.6店から2021年の28.3店へ。人口が増えたぶん、密度の低下はもっと大きいのです。

③ 川崎区53.6店に対し宮前区13.0店。市内でも4.1倍の差があります。

30年で4割減った

飲食店数の推移(1981年〜2021年・川崎市)

2006年までは事業所・企業統計調査、2009年からは経済センサス/棒が店舗数、折れ線が人口1万人あたり

読み方:1981年の6,797店から増え、1991年の7,280店でピーク。そこから一貫して減り続け、2021年は4,190店です。30年で3,090店、42.4%減りました。
折れ線(人口1万人あたり)はもっと急です。2001年の52.6店から2021年の28.3店へ、20年で46.2%減。人口が増えたぶん、密度の低下はさらに大きくなっています。
2006年と2009年のあいだに調査の切れ目があります。ただし2009年以降だけを見ても5,615→4,190店と25.4%減っており、傾向は変わりません。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:事業所・企業統計調査、経済センサス)をもとに作成

小売店と飲食店、どちらがより減ったか

1981年を100としたときの店舗数の指数

読み方:1981年を100として比べると、2021年は小売店52.6、飲食店61.6。減り方は小売店のほうが大きいことがわかります。
ただし飲食店は1991年まで107.1まで増えてから落ちたのに対し、小売店は最初から一貫して減り続けました。下がり始めた時期が10年違います。
「大規模小売店舗の立地」のページで見たとおり、小売店の減少には大型店の進出という明確な要因がありました。飲食店の場合、大型店に置き換わったというより、チェーン店への集約と、外食そのものの構造変化が効いています。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

政令指定都市20市のなかで

人口1万人あたりの飲食店数(2021年)

飲食店数 ÷ 住民基本台帳人口(日本人)/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は28.3店で20市中17位。1位の大阪市(78.5店)の36%にとどまります。
大阪市78.5、京都市62.2、名古屋市57.2、福岡市55.8——上位は「食の街」として知られる都市が並びます。
下位に並ぶのは川崎市(28.3)、相模原市(26.2)、さいたま市(25.7)、千葉市(24.0)。横浜市(29.9)も含め、東京圏のベッドタウンが集中しています。「昼間人口と夜間人口」で見たとおり、これらの都市の住民は昼間に市外へ出ています。外食は、働く場所でするのです。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

7区でどう違うか

区別の飲食店数と密度(2021年)

棒が店舗数、菱形が人口1万人あたりの店舗数

読み方:川崎区が1,161店、人口1万人あたり53.6店で突出しています。市平均(28.3店)の1.9倍、もっとも低い宮前区(13.0店)の4.1倍です。
次いで中原区37.6店(956店)。武蔵小杉の再開発エリアです。
もっとも低いのは宮前区13.0店、次いで麻生区16.2店。北部の住宅地は、飲食店が薄い。「昼間人口と夜間人口」で見たとおり、宮前区の昼夜間人口比率は74.5%で7区最低。昼にいない街には、飲食店は成り立ちません。
川崎区53.6店は、政令市20市のなかに置くと神戸市(54.2店)とほぼ同じ——市内に「大阪市級の密度の区」と「20市最下位を下回る区」が同居しています。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

解説:外食は、働く場所でする

1991年がピークだった

川崎市の飲食店は、1981年の6,797店から1991年の7,280店まで増えました。バブル期のピークです。

そこから一貫して減少します。1996年7,203店、2001年6,555店、2006年5,897店、2009年5,615店、2016年4,987店、そして2021年4,190店。

30年で3,090店、42.4%が消えました。

人口1万人あたりで見ると、減り方はさらに大きくなります。2001年の52.6店から2021年の28.3店へ、20年で46.2%減。この間に川崎市の人口は約25万人増えていますから、市民が実際に感じる「店の少なさ」は、店舗数の減少以上だということです。

2021年の数字にはコロナ禍の影響が含まれます。2016年の4,987店から2021年の4,190店へ、5年で797店(16.0%)の減少。この落差の一部は感染症対策による休廃業です。

小売店より、減り始めが10年遅い

「大規模小売店舗の立地」のページで見たとおり、小売店は1981年の1万1,556店から2021年の6,083店へ47.4%減りました。

1981年を100とした指数で比べると、2021年は小売店52.6、飲食店61.6。減り方は小売店のほうが大きいことがわかります。

ただし動き方が違います。小売店は1981年から一貫して減り続けたのに対し、飲食店は1991年まで増えてから落ちました。下がり始めた時期が10年違うのです。

小売店の減少には、大型店の進出という明確な要因がありました。大型店は40年で72店から178店へ2.5倍に増えています。

飲食店の場合、大型店に置き換わったという単純な話ではありません。チェーン店への集約(1店あたりの規模拡大)、中食・惣菜への需要移動、そして近年はデリバリーの普及。外食という行為そのものの形が変わりました。

下位はすべて東京圏

2021年の人口1万人あたり飲食店数を政令指定都市20市で比べると、川崎市は28.3店で17位です。

1位は大阪市の78.5店。川崎市の2.8倍です。2位京都市62.2店、3位名古屋市57.2店、4位福岡市55.8店、5位神戸市54.2店——「食の街」として知られる都市が上位に並びます。

いっぽう下位は、千葉市24.0店、さいたま市25.7店、相模原市26.2店、川崎市28.3店、横浜市29.9店。下位5市のうち4市が東京圏です。

理由は「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおりです。川崎市の昼夜間人口比率は87.3%で20市最下位。相模原市88.9%、さいたま市92.9%、横浜市92.5%、千葉市98.1%——いずれも昼に人が出ていく都市です。

外食は、住んでいる場所ではなく働いている場所でする。ランチも、仕事帰りの一杯も、勤務先の近くで済ませてしまう。だからベッドタウンには飲食店が育ちにくいのです。

「小売業の年間商品販売額」のページで見た「1人あたり小売販売額が20市最下位」、「大規模小売店舗の立地」で見た「大型店密度が20市最下位」。飲食店の密度17位も、同じ構造から出ています。

市内に4.1倍の差

市内の分布は、市外との差以上に極端です。

川崎区は1,161店、人口1万人あたり53.6店。市平均(28.3店)の1.9倍です。この53.6店という数字は、政令市20市に置くと神戸市(54.2店)とほぼ同じ、広島市(47.1店)より上。

次いで中原区37.6店(956店)、幸区27.5店、高津区・多摩区23.7店、麻生区16.2店。そしてもっとも低いのが宮前区13.0店(300店)。

川崎区と宮前区で4.1倍の差です。宮前区の13.0店は、20市最下位の千葉市(24.0店)の半分にすら届きません。

川崎区の昼夜間人口比率は116.2%で7区唯一の100超、宮前区は74.5%で7区最低。この差が、そのまま飲食店の密度になっています。

つまり川崎市には、大都市の繁華街並みの区と、飲食店がほとんどない区が同居しているということです。市全体の平均値だけを見ていては、この実態は見えません。

中小企業への示唆

1. 「川崎で飲食店」は、区を選ぶ話——川崎区53.6店と宮前区13.0店では、競合環境も客層もまったく違います。市場調査は市単位ではなく区単位、できれば駅単位で行うべきです。

2. 北部は「競合が少ない」ではなく「客がいない」——宮前区の13.0店という薄さは、参入余地ではなく需要の薄さを示しています。昼に人がいない街で昼の飲食店は成り立ちません。夜と週末に振り切るか、デリバリー・テイクアウトを前提に組むか。

3. 30年で4割減った市場に、新規参入する意味——減り続けているのは事実ですが、それは個人経営の小規模店が消えた結果でもあります。残った市場をチェーンが取っている。チェーンがやらない業態——専門性、地域密着、少人数対応——には依然として余地があります。

4. 中食・デリバリーは飲食店の外にある——飲食店数の減少と、外食需要の減少はイコールではありません。惣菜、弁当、デリバリー。「店を構える」以外の形で食を提供する選択肢が、川崎のような通勤都市では特に有効です。

5. 昼と夜で客層が完全に入れ替わる——「昼間人口と夜間人口」で見たとおり、毎朝19万5,865人が市外へ出ます。平日昼のメニューと夜のメニューを分けるのは、川崎ではとくに合理的です。

データの注意点

2006年までと2009年からでは、調査が違います。前者は「事業所・企業統計調査」、後者は「経済センサス」。捕捉範囲や定義が完全に同じではないため、2006年と2009年のあいだの変化には調査変更の影響が混ざっています。グラフでも切れ目を入れて表示しています。

2021年は令和3年経済センサス‐活動調査(6月1日現在)によるものです。コロナ禍のさなかの調査であり、休業中の店舗の扱いによって数値が変動する可能性があります。この年の落ち込みをそのまま平常時の水準と考えるべきではありません。

「飲食店」は日本標準産業分類の飲食店にあたる事業所です。持ち帰り・配達飲食サービス業(弁当屋、宅配ピザなど)の扱いは調査年によって異なる場合があります。

人口1万人あたりの計算には住民基本台帳人口(日本人)を使っています。外国人を含めると分母が増えるため、数値はやや小さくなります。都市間比較では同じ基準のため順位に影響しません。

1996年以前は人口データが5年ごとの国勢調査年しか取れないため、密度の折れ線は2001年以降のみ表示しています。