消費者物価地域差指数(川崎市)

物価は政令市で1位。原因はほぼ家賃です。

このページの要点

① 川崎市の物価水準は104.2(全国=100)。政令指定都市20市で1位です。2位の横浜市(104.0)、3位の相模原市(102.3)を上回り、最下位の岡山市(97.7)とは6.5ポイント差。

② ところが家賃を除くと102.6まで下がります。差の1.6ポイントが家賃。川崎の物価高は、ほぼ住居費で説明できます。

③ 食料は101.7で、決して高くありません。札幌市103.4、東京都区部103.1、横浜市102.6より安い水準です。

政令指定都市20市のなかで

消費者物価地域差指数(2024年)

全国平均=100/100を超えると全国より物価が高い/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は104.2で政令指定都市20市の1位です(東京都区部104.9は政令指定都市ではないため、参考として並べています)。
2位は横浜市104.0、3位は相模原市102.3。上位3市がすべて神奈川県です。次いで札幌市101.7、さいたま市101.3。
最下位は岡山市の97.7。川崎市との差は6.5ポイントです。
全国平均(100.0)を上回るのは9市、下回るのは11市。川崎に住むと、全国平均より4.2%高い買い物をしていることになります。

出典:総務省「小売物価統計調査(構造編)」をもとに作成

家賃を含むかどうかで、順位が変わる

「総合」と「家賃を除く総合」の比較(2024年)/棒の差が家賃の影響

読み方:川崎市は総合104.2に対し、家賃を除くと102.6。1.6ポイント下がります。
横浜市は104.0→103.3で0.7ポイント、相模原市は102.3→101.8で0.5ポイント。川崎市の下げ幅がもっとも大きいのです。
逆に大阪市(99.4→98.8)、名古屋市(99.1→99.1)は差が小さい。
川崎の物価高は、ほぼ家賃で説明できます。「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎市の用途地域1haあたり人口は政令市20市で2位。土地が足りない → 家賃が高い → 物価が高いという連鎖です。

出典:総務省「小売物価統計調査(構造編)」をもとに作成

食料だけなら、それほど高くない

食料の地域差指数(2024年・全国=100)/川崎市を濃い色で表示

読み方:食料の指数で見ると、川崎市は101.7。総合の1位とは打って変わって、中位にとどまります。
1位は札幌市の103.4、2位東京都区部103.1、3位横浜市102.6。川崎市より食料が高い市が複数あります。
もっとも安いのは浜松市97.8。川崎市との差は3.9ポイントで、総合の差(6.5ポイント)より小さくなります。
「川崎は物価が高い」という実感の中身は、食費ではなく住居費だということです。

出典:総務省「小売物価統計調査(構造編)」をもとに作成

11年でどう動いたか

川崎市の物価水準の推移(2014年〜2024年)

全国平均=100/横浜市・東京都区部と比較

読み方:川崎市の総合指数は2016年〜2018年の105.4がピークで、そこから下がって2022年〜2023年は104.0。2024年は104.2です。
全国との差が縮まっています。2018年は全国より5.4%高かったのが、2024年は4.2%高い。1.2ポイント縮小しました。
これは川崎の物価が下がったのではなく、全国の物価が川崎に追いついたということです。指数は全国平均を100とした相対値なので、全国が上がれば指数は下がります。
家賃を除く指数も103.7(2018年)から102.6(2024年)へ、同じように下がっています。

出典:総務省「小売物価統計調査(構造編)」をもとに作成

解説:高いのは家賃だけ

政令市でいちばん物価が高い

2024年、川崎市の消費者物価地域差指数は104.2。全国平均を100としたとき、川崎市の物価は4.2%高いという意味です。

この104.2は政令指定都市20市で1位。2位の横浜市104.0、3位の相模原市102.3を上回ります。上位3市がすべて神奈川県という結果です。

参考として並べた東京都区部は104.9。川崎市は東京都区部に0.7ポイントまで迫っています。

もっとも安いのは岡山市の97.7。次いで新潟市98.2、浜松市98.4、福岡市・北九州市98.5。川崎市と岡山市の差は6.5ポイントです。

家賃を外すと1.6ポイント下がる

ところが、この統計には「家賃を除く総合」という参考指標があります。

川崎市の家賃を除く指数は102.6。総合の104.2から1.6ポイント下がります。

他市と比べると、この下げ幅の大きさが際立ちます。横浜市104.0→103.3(0.7ポイント)、相模原市102.3→101.8(0.5ポイント)、大阪市99.4→98.8(0.6ポイント)、名古屋市99.1→99.1(差なし)。

川崎市の下げ幅1.6ポイントは、比較したなかでもっとも大きいのです。

つまり川崎の物価が高い理由は、ほぼ家賃で説明できます。

この結論は、他のページの発見と一本の線でつながります。

「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎市の用途地域は38年でわずか1.5%しか増えず、人口は41%増えました。用途地域1haあたりの人口120.9人は政令指定都市20市で2位。さらに市域の14.0%は工業専用地域で、住宅を建てられません。

「1人あたり市税額」のページで見た固定資産税8万9,062円は20市3位。土地が足りない → 地価が高い → 家賃が高い → 物価が高いという連鎖です。

食料は中位

食料の指数を見ると、印象がさらに変わります。

川崎市の食料指数は101.7。総合では1位だったのに、食料では中位にとどまります。

1位は札幌市の103.4、2位東京都区部103.1、3位横浜市102.6、4位相模原市101.9、5位熊本市101.8。川崎市より食料が高い市が複数あります。

もっとも安いのは浜松市97.8、次いでさいたま市98.9、名古屋市98.7。川崎市との差は最大でも3.9ポイントで、総合の差(6.5ポイント)より小さい。

「小売業の年間商品販売額」のページで見たとおり、川崎市民1人あたりの小売販売額は20市で最下位でした。「大規模小売店舗の立地」で見た大型店の密度も20市最下位。店が少ないのに食料品は特に高くない——これは、市民が東京・横浜で買い物をすることで価格競争が働いている、あるいは市内の店が近隣と競争しているためと考えられます。

全国が追いついてきた

11年の推移を見ると、川崎市の指数は下がっています。

2016年〜2018年の105.4がピークで、2022年〜2023年に104.0、2024年は104.2。ピークから1.2ポイント低下しました。

ただしこれは、川崎の物価が下がったという意味ではありません。この指数は全国平均を100とした相対値です。全国の物価が上がれば、川崎の指数は下がります。

つまり近年の全国的な物価上昇のなかで、全国が川崎に追いついてきたということです。家賃を除く指数も103.7(2018年)から102.6(2024年)へ、同じ動きをしています。

中小企業への示唆

1. 「川崎は物価が高い」は、商品価格の話ではない——食料101.7は中位です。川崎だから高く売れる、という前提は成り立ちません。小売・飲食の価格設定は、全国並みか、やや上程度と考えるべきです。

2. 高いのは固定費のほう——家賃で1.6ポイント。店舗・事務所・倉庫の賃料が、事業の採算を圧迫します。「土地利用と工業用地」で見たとおり、用地は増えません。この構造は当面変わりません。

3. 従業員の生活コストとして効く——住居費が高いということは、同じ給与でも手元に残る額が少ないということです。「賃金・労働時間」のページで見たとおり、神奈川県の賃金は東京都の88%。採用では、住宅手当や社宅が実質的な差別化になります。

4. 立地コストと売価が見合わない——家賃は全国上位、売価は全国並み。川崎で高家賃の立地を取るなら、回転数か客単価のどちらかで取り返す設計が必要です。「飲食店の数と密度」で見たとおり、飲食店は30年で42.4%減りました。この構造が背景にあります。

5. 郊外型・非店舗型に分がある——家賃が効くのは店舗を構える業態です。訪問、配送、オンライン、シェア型。固定費を持たない形なら、川崎の物価高はハンデになりません。

データの注意点

政令指定都市については、公表されているのが「総合」「食料」「家賃を除く総合」の3つだけです。住居、光熱・水道、被服、教育など10大費目の内訳は、都道府県庁所在市のみ公表されています。川崎市は県庁所在市ではないため、費目別の詳細は取得できません。

このページで「家賃の影響」としているのは、「総合」と「家賃を除く総合」の差から逆算したものです。家賃そのものの指数が公表されているわけではありません。

指数は全国平均を100とした相対値です。物価そのものの上昇率を表すものではありません。全国が上がれば、同じ物価でも指数は下がります。時系列の変化は「全国との差の変化」として読んでください。

「東京都区部」は政令指定都市ではありませんが、比較の目安として並べています。順位を数えるときは除いています。

データは2013年からですが、川崎市の値は2014年から収録されています。