📗 令和8年版 情報通信白書

第Ⅱ部:情報通信分野の現状と課題
デジタル中小企業診断士 村上知也

第1章 ICT市場の動向

1. ICT産業の概況

情報通信産業GDP
71.7兆円
2024年 前年比+6.1%
全産業GDP比
約11.5%
全産業中最大の割合
情報化投資額
25.7兆円
2024年 前年比+1.9%
デジタル赤字
約6.6兆円
2025年 支払超過額

2024年の情報通信産業の名目GDPは71.7兆円で前年比6.1%増。全産業のGDPに占める割合は約11.5%で、全産業中最大の規模を維持しています。情報化投資は25.7兆円(うちソフトウェアが20.2兆円)で堅調な増加基調です。

一方、「通信・コンピュータ・情報サービス」分野のサービス収支は約6.6兆円の支払超過(いわゆる「デジタル赤字」)。クラウドサービスなどの利用料が米国等への流出を拡大しています。ICT分野の輸入超過額は約4.0兆円にのぼります。

2. 研究開発の動向

企業の研究費全体は17兆4,303億円、うち情報通信産業は3兆9,939億円(22.9%)。ICT分野のR&D投資は着実に増加しています。特にAI関連の研究開発投資が世界的に拡大しています。

📡 電気通信分野の動向

5G人口カバー率
98.4%
2024年度末 目標前倒し達成
FTTH契約数
約3,800万
光ファイバ整備率も高水準

5G人口カバー率は2024年度末時点で98.4%に到達し、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」で掲げた2025年度末目標(97%)を前倒しで達成しました。

通信分野の新たな潮流

技術トレンド概要
オール光ネットワーク光ファイバを基盤とした超低遅延・大容量通信
NTN(非地上系ネットワーク)衛星通信を活用し、陸・海・空・宇宙を統合するネットワーク
量子暗号通信量子力学の原理を用いた究極のセキュア通信
AI-RANAIを活用した無線アクセスネットワークの最適化
Beyond 5G(6G)2030年代の実現を目指す次世代通信基盤

📺 放送・コンテンツ分野の動向

放送市場は従来型テレビの視聴減少が続く中、動画配信サービスの急成長が顕著です。コンテンツ市場では、動画配信・音楽配信・電子書籍が引き続き拡大。放送番組の同時配信等に係る権利処理の円滑化も進められています。

広告市場ではデジタル広告が引き続き成長し、テレビ広告との差がさらに拡大。放送系コンテンツの海外輸出も増加傾向にあります。

☁️ データセンター・クラウド・AI市場

データセンター

データセンター需要はAI関連の計算需要急増に伴い、国内外ともに大幅な成長が続いています。政府もデータセンターの地方分散を政策的に推進しています。

クラウドサービス

クラウドサービス市場は引き続き堅調な成長。パブリッククラウドを中心に企業のクラウド移行が加速しています。エッジコンピューティングの重要性も高まっています。

AI市場

📌 世界のAI市場は急速に拡大。各国がAI開発力の強化とAIガバナンスの両立に取り組む中、日本は「広島AIプロセス」を主導し、66カ国・地域の賛同を得て国際連携をリード。

🔒 サイバーセキュリティの動向

世界市場規模
1,820億ドル
2024年 前年比+8.8%

世界のサイバーセキュリティ市場は2024年に1,820億ドル(前年比8.8%増)に達しました。サイバー攻撃は高度化・大規模化が続き、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃が深刻な脅威となっています。

無線LANセキュリティの強化、送信ドメイン認証技術(DMARC等)の普及も進行中。AI社会を支える基盤として、セキュリティ投資の重要性がより一層高まっています。

📱 デジタル活用の動向

国民生活におけるデジタル活用

インターネット利用率やスマートフォン保有率は引き続き高水準。デジタルサービスの活用は幅広い世代に浸透しつつあります。

企業活動におけるデジタル化

各国企業のデジタル化状況を比較した結果、日本企業のテレワーク・オンライン会議の活用は一定の水準にあるものの、データ利活用やDX推進においては欧米・中国に遅れが見られます。

行政分野のデジタル活用

マイナンバーカード保有率
82.1%
2026年3月末 10,221万枚
健康保険証登録率
90.9%
約9,295万枚
公金受取口座登録率
62.3%
約6,371万件

マイナンバーカードの保有枚数は2026年3月末時点で1億221万枚(人口比82.1%)。健康保険証としての登録率は90.9%に達しています。電子行政サービスの利用も着実に拡大しています。

第2章 総務省におけるICT政策の取組

主要政策テーマ

政策領域主な取組
総合ICT政策少子高齢化・人口減少、災害対応、国際情勢複雑化への対応
電気通信事業市場環境変化への対応、公正競争環境整備、デジタルインフラ整備
電波政策Beyond 5G、NTN制度整備、周波数再編・共用推進
放送政策デジタル時代の放送制度見直し、コンテンツ流通促進
サイバーセキュリティ脅威対策強化、安全なAI社会のセキュリティ基盤
ICT利活用地域社会DX、デジタルデバイド解消、ICTリテラシー向上
技術政策NICT研究開発、量子技術、光通信基盤技術
国際戦略広島AIプロセス、万国郵便連合対応、国際標準化

デジタルインフラ整備計画2030

📌 光ファイバ整備、データセンター・海底ケーブルの地方分散、Beyond 5G・量子暗号通信の研究開発・社会実装を推進し、AI社会を支えるデジタル基盤の構築を目指す。

国際海底ケーブルの防護策強化や、鉄塔等提供事業の認定制度創設、ブロードバンドサービスの維持確保なども重点施策です。

💼 中小企業経営者へのポイント

📌 情報通信産業はGDP71.7兆円・全産業比11.5%の巨大産業。中小企業が事業を伸ばすうえでICTインフラの理解と活用は不可欠です。

経営に直結するトレンド

トレンド中小企業への影響
5Gカバー率98.4%地方でも高速モバイル環境が前提に → リモートワーク・IoT導入のハードルが低下
クラウド普及加速初期投資なしでIT環境を構築 → 会計・顧客管理・在庫管理のクラウド化
サイバー攻撃高度化セキュリティ市場1,820億ドル → 中小企業こそ基本対策(DMARC等)が急務
マイナンバー普及82%電子申請・電子契約が標準化 → 紙ベース業務からの移行が加速
デジタル赤字6.6兆円海外クラウド依存 → 国産SaaSへの関心高まり&政策支援の追い風

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