準同型暗号とは
準同型暗号(Homomorphic Encryption)とは、暗号化されたデータに対して復号せずに直接計算を行い、その結果を復号すると平文での計算結果と一致する性質を持つ暗号方式のことです。データを一切公開せずに計算処理を第三者に委託できるため、クラウド上でのプライバシー保護付きデータ処理やAI推論に応用が期待されています。
準同型暗号の分類
準同型暗号は、対応する演算の範囲により分類されます。部分準同型暗号(PHE)は加算または乗算のいずれか一方のみに対応し、RSA暗号(乗算準同型)やPaillier暗号(加算準同型)が該当します。やや準同型暗号(SHE)は加算と乗算の両方に対応しますが、回数に制限があります。完全準同型暗号(FHE)は任意の回数の加算と乗算に対応し、理論的にはあらゆる計算が可能です。2009年にCraig Gentryが初めてFHEの構成法を示し、以来研究が活発化しています。
実用化の現状と課題
完全準同型暗号は計算コストが非常に大きく、実用化にはまだ課題があります。しかし、近年のアルゴリズムの改良(CKKS、BFV、BGVスキーム等)やGPUアクセラレーション、専用ハードウェアの開発により、特定のユースケースでは実用可能な水準に達しつつあります。医療データの分析、金融リスク計算、AIモデルの推論(暗号化されたデータに対する予測)などの分野で実証実験が進んでおり、データガバナンスの新たな選択肢として注目されています。