事例Ⅲ|生産・技術

平成25年度 第2次試験問題 事例Ⅲ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ / 試験時間 14:00〜15:20 / 配点100点

与件文

【C社の概要】

1C社は、関西地方に本社を置き、地元関西や中部地方などを主な販売エリアとして、通信事業者などの通信施設で使用される配線用ケーブル支持器具、通信機器設置台など金属製の通信施設用部材(以下、「通信用部材」という。)を生産、据付けする企業である。資本金は3,600万円、従業員数は95名、最近の年間売上高は約25億円前後で推移している。会社組織には受注、設計および据付業務を担当する技術部、関西本社工場および関東工場での製造・物流を担当する製造部、新製品開発を担当する開発部、経理および総務業務を担当する総務部がある。なお、技術部は本社のほか、中部支店と東京支店に配置されている。

2通信事業者が通信施設の新設や改修などの工事を行う場合、通信事業者側が企画し、通信建設会社が施工を請負う。C社はこの通信建設会社から受注する。

3C社は、創業以来、通信建設会社の指導を受け、通信用部材事業における品質を確保するために製品の標準化や据付け施工面での保安対策技術の習得に努めた。また、製品開発力を武器に営業活動を展開し、業績の拡大とともに中部支店を開設した。さらにそれまで付き合いのあった通信建設会社の勧めで、新たな通信事業者の開拓を目指し東京支店を開設している。

【市場の概要】

4通信事業者が必要とする通信用部材の市場規模は小さい。この市場でC社は、同業者約10社と競合状態にあり、第2位のシェアを確保している。市場シェア第1位企業X社の販売エリアは首都圏中心である。X社と比較して、新製品開発力・提案力、製品・施工品質についてはC社の評価は高いが、納期や価格面での評価は低い。

5通信機器は、技術革新によって高速化やダウンサイジング化が進み、通信施設も省スペース化が進んでいる。通信用部材業界にもこの影響が及んでおり、高速化、ダウンサイジング化が進む通信機器に対応した新製品の提案が求められ、さらに、低価格化や工事期間の短縮などの要求が厳しい。C社では、開発部を中心にダウンサイジング化が進む通信機器に対応した通信用部材の開発を行い、通信事業者や通信建設会社へ提案し、新規取引先を獲得する営業展開を進めてきており、今後も強化する方針である。

【C社の生産概要】

6C社が受注する通信用部材は、施工図面で指示されるが、2種類の部材の組み合わせで構成される。1つは通信事業者ごとに寸法、形状が規格化されている標準仕様部材、もう1つは通信施設の大きさ、建物への設置条件、使用する通信機器などにあわせて製造する補助部材である。

7営業活動は、経営者の通信建設会社へのトップセールスによる受注情報の収集が基本である。受注後は、対象通信施設の現地調査、設計、製造、そして現地据付け施工まで行う。

8受注、現地調査、設計は技術部内で受注物件ごとに選任された設計担当者が担当し、通信施設での調整事項や設計変更などの内容は担当している設計担当者しか分からない。設計業務にはCADが使われているが、部品のような設計要素のライブラリー化などは行われていない。また、技術部としてCADの使用方法についての標準化やデータの共有化は図られておらず、設計担当者各人がそれぞれ独自に使用している。このような設計担当者の業務状況のため、受注から据付け施工完了までの全期間に占める設計担当業務には大きな時間が割かれている。

9各部材製造については、関西本社工場では多品種少量の受注生産の補助部材を担当し、関東工場では在庫対応が可能でロットサイズを大きくできる標準仕様部材を担当している。関西本社工場は汎用加工機を用いた多品種少量生産に適しているが、関東工場は後述する経緯があってOAフロア工場として建設されたことから専用機による量産体制であるため、このような両工場の分担となっている。

10部材の物流については、関西本社工場に物流センターがあり製造部が担当している。関東工場で製造された製品は、関西本社工場にある物流センターに運ばれそこで在庫となり、両工場で製造されたものを物件ごとに組み合わせて出荷する。

【通信用部材以外の新製品開発】

11C社では、通信用部材以外の新製品開発にも積極的に取り組んできた。開発部では取引先、仕入先など関連企業からの依頼や情報提供に応じて、また社内からの提案に応じて新製品企画・開発を行っている。

12その取り組みとして、過去に大手建材メーカーY社からの提案で、Y社の建材メーカーとしてのノウハウとC社の通信用部材のノウハウを活用し、新製品として施工性が良く多機能なオフィス用OAフロアを事業化した経験がある。OAフロアとは、コンピュータなどの多くの配線を床下配線可能な状態にするために床を二重化するものである。全国に販売拠点を持ち多くの建設会社と取引関係のあるY社は、ビル工事を施工する建設会社からOAフロアの引き合いがあった場合、他メーカーから商品を仕入れて受注に対応していたが、当時引き合いが多くなったことから自社ブランド製品化を進めるためにC社へ共同開発の提案を行ったものである。

13北関東にOAフロア量産の関東工場をC社が建設して製造し、Y社の物流センターへ納品する契約をした。Y社では物流センターに在庫し即納体制を整え、全国にある販売網を利用して建設会社に営業を展開した。しかし、ビル完成後にIT機器等を納品する事務機メーカーのシンプルな機能で軽量化された低価格製品と競合し、Y社の販売数量が低迷したため、C社はこの事業から撤退した。

14その他C社開発部では、通信用部材以外の新製品開発を多く手掛けてきたが、現在まで大きな成功例はなく推移している。

設問

第1問 配点 30点

C社では、横ばいで推移している業績を改善するためX社のシェアが高い首都圏市場への参入を目指している。この課題について、以下の設問に答えよ。

(設問1) C社が首都圏市場への参入で活用すべき競争優位性は何か、60字以内で述べよ。
(設問2) C社が首都圏市場への参入を実現するためには、関東工場の役割をどのように変えるべきなのか、またそれを実現するためにはどのような具体的対応策が必要となるのか、120字以内で述べよ。
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解答例

設問1X社より評価の高い新製品開発力・提案力と、製品・施工品質の高さ。ダウンサイジング対応部材を開発・提案できる技術力。(57字)

設問2標準仕様部材の量産専用工場である関東工場を、首都圏向けの補助部材も製造する拠点へ転換する。汎用機の導入と多能工化で多品種少量生産に対応し、東京支店と連携した現地調査・据付け体制を整え、短納期化と価格対応力を高める。(107字)

解説(考え方・プロセス)

設問1の着眼点:首都圏でX社に勝てる競争優位を問う。第4段落のX社との比較がそのまま根拠。

  • X社より高評価=新製品開発力・提案力、製品・施工品質(第4段落)。第5段落のダウンサイジング対応の開発・提案力も強み。
  • 逆に低評価=納期・価格。ここは優位性ではないので設問1には書かない(設問2の課題になる)。

設問2の着眼点:関東工場の役割をどう変えるか具体的対応策」の2点を必ず両方答える。

  • 現状(第9段落)…関東工場は専用機による標準仕様部材の量産専用。首都圏物件の補助部材は遠方の関西本社工場が担うことになり、納期面で不利(第4段落の弱み)。
  • 役割転換…関東工場を首都圏向けの補助部材(多品種少量)も担う拠点へ。
  • 具体策…汎用加工機の導入と多能工化で多品種少量に対応、東京支店の技術部と連携した現地調査・設計・据付け体制を整え、短納期化・価格対応でX社劣位を補う。

第4段落の弱み(納期・価格)を、関東工場の地産地消的な役割転換で克服する流れがきれいに通る。

第2問 配点 40点

C社では、顧客からの問い合わせに迅速に対応するため、また、短納期化に対応するため、技術部内の情報の共有化や業務の効率化を図る計画がある。この計画について、以下の設問に答えよ。

(設問1) 技術部内で共有化が必要と考える具体的情報名を80字以内であげよ。
(設問2) 技術部内の業務効率化を図るために必要な具体的改善内容を120字以内で述べよ。
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解答例

設問1各物件の受注内容、現地調査結果、設計図面や設計変更・調整事項、標準仕様部材や補助部材の設計データ、過去の類似物件の設計情報を共有化する。(68字)

設問2CADの使用方法を標準化し、部品など設計要素をライブラリー化して再利用する。設計データを技術部全体で共有・一元管理し、担当者しか分からない調整・変更情報も蓄積・共有する。これにより属人化を解消し設計時間を短縮して効率化する。(112字)

解説(考え方・プロセス)

根拠は第8段落に集中:技術部の問題点が列挙されているので、これを「共有すべき情報(設問1)」と「効率化策(設問2)」に振り分ける。

第8段落の問題点:

  • 調整事項・設計変更を担当者しか分からない(情報の属人化)。
  • 部品など設計要素のライブラリー化がされていない
  • CADの使用方法の標準化・データ共有がされず、各人が独自に使用。
  • 結果、設計業務に大きな時間がかかる。

設問1(共有すべき情報名):「情報を挙げよ」なので、具体的なデータ名を列挙する。受注内容・現地調査結果・設計図面・設計変更/調整事項・部材の設計データ・過去物件の類似設計情報など。施策ではなく“情報”を答えるのが指示。

設問2(効率化の具体的改善内容):問題点を裏返して施策化。
CAD使用方法の標準化
設計要素のライブラリー化・再利用
設計データの共有・一元管理
・属人情報の蓄積・共有
これにより属人化解消と設計時間短縮=短納期化につなげる。設問1の「情報共有」と重複しすぎないよう、設問2は仕組み・方法の改善に軸足を置く。

第3問 配点 30点 140字以内

C社経営者は、これまで蓄積した生産技術のノウハウを活用し、通信用部材市場以外での新規事業開発を模索している。過去に経験したY社との共同開発事業の失敗の要因と、その失敗の要因を踏まえた今後の新規事業開発の留意点を、140字以内で述べよ。

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解答例(140字)

失敗要因は、多機能なOAフロアが事務機メーカーのシンプルで軽量・低価格な製品と競合し市場ニーズと合わず販売が低迷した点と、販売をY社に依存した点である。留意点は、開発前に市場ニーズや競合を調査し価格・機能の適合性を見極めること、販売チャネルを自社でも確保し依存を避けることである。

解説(考え方・プロセス)

設問の構造:「①失敗要因」+「②それを踏まえた留意点」の2点を必ず両方書く。②は①の裏返しで対応させると整合する。

①失敗要因(第12・13段落から抽出):

  • C社のOAフロアは施工性が良く多機能だったが、後発の事務機メーカーのシンプル・軽量・低価格な製品と競合し販売が低迷(=市場ニーズとのミスマッチ/オーバースペック)。
  • 製造はC社、販売はY社に依存。Y社の販売不振がそのままC社の撤退に直結(=販売チャネルの他社依存)。

②留意点(要因の裏返し):

  • 市場ニーズ・競合の事前調査を行い、価格・機能の適合性を見極める(過剰品質を避ける)。
  • 販売チャネルを自社でも確保し、特定企業への依存を避ける。

第14段落の「新製品開発に大きな成功例がない」も、技術志向に偏りマーケティング視点が弱いことの表れ。要因と留意点をペアで対応させて140字に収めるのがコツ。

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