試験科目設置の目的と内容
― 1次試験 全7科目をわかりやすく ―
中小企業診断士 第1次試験の各科目には、試験実施機関が定めた「科目設置の目的」と「出題内容」があります。本ページでは、令和7年度(2025年度)第1次試験案内をもとに、科目ごとの目的・主な出題内容を整理し、学習のポイントを解説します。「なぜこの科目を学ぶのか」を押さえることで、過去問演習の方向性が定まります。
科目 1
経済学・経済政策
科目設置の目的企業経営では、基本的なマクロ経済指標の動きを理解し、為替相場・国際収支・雇用・物価動向等を的確に把握することが、意思決定の基本となります。さらに、経営戦略やマーケティングの成果を高め、積極的な財務戦略を展開するには、ミクロ経済学の知識も必要です。こうした観点から、経済学の主要理論と、それに基づく経済政策の知識を判定します。
主な出題内容- ⑴ 経済指標の見方・読み方国民経済計算、国民所得統計、雇用統計、物価指数、景気動向指数、マネーストック統計、国際収支、為替レート など
- ⑵ マクロ経済理論と経済政策GDP、貨幣市場と利子率、IS-LM曲線、財政政策、金融政策、雇用と物価、景気循環 など
- ⑶ 国際経済と経済政策比較生産費・貿易理論、貿易政策、国際収支と為替、国際マクロ経済 など
- ⑷ 主要経済理論ケインズ理論、古典派・新古典派、マネタリズム など
- ⑸ 市場メカニズム市場均衡、弾力性、経済余剰、資源配分、市場の失敗 など
- ⑹ 消費と生産の理論効用理論、需要曲線、生産関数、費用関数、利潤最大化、供給曲線 など
- ⑺ 組織と戦略の経済学情報の不完全性、ゲーム理論、独占・寡占、製品差別化、規模・範囲の経済性 など
- ⑻ 所得分配公平性、生産要素市場、所得再分配と税制・補助金 など
科目 2
財務・会計
科目設置の目的財務・会計の知識は企業経営の基本であり、財務諸表による経営分析は、企業の現状把握や問題点の抽出に欠かせない手法です。今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略として他社買収を行うケースの増加が見込まれることから、割引キャッシュフローを用いた投資評価や企業価値算定の知識も必要となります。こうした財務・会計の知識を判定します。
主な出題内容- ⑴ 簿記の基礎簿記原理、会計帳簿、決算処理一巡(試算表・精算表、決算仕訳、財務諸表作成)
- ⑵ 企業会計の基礎損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、企業結合、会計ディスクロージャー
- ⑶ 税務会計の基礎益金と損金、課税所得と税額の計算
- ⑷ 原価計算原価概念、原価計算の種類と方法、原価情報の利用
- ⑸ 経営分析経営比率分析(収益性・安全性・生産性・成長性)、CVP分析
- ⑹ 利益と資金の管理利益計画、予算実績差異分析、資金繰り、キャッシュ・フロー管理
- ⑺ 資金調達と配当政策資金調達の形態、資本コスト(WACC)、ペイアウト政策、最適資本構成・MM理論
- ⑻ 実物投資貨幣の時間価値・DCF、投資評価基準(回収期間法、IRR、NPV など)
- ⑼ 証券投資ポートフォリオ理論、資本市場理論(効率的市場仮説、CAPM)
- ⑽ 企業価値株主価値の算定、企業価値評価モデル、M&Aにおける企業評価
- ⑾ デリバティブとリスク管理オプション、先物、スワップ など
科目 3
企業経営理論
科目設置の目的資金面以外の経営に関する基本理論の習得は、経営の現状分析・問題解決や新事業展開への助言に不可欠です。近年は、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性も高まっています。こうした観点から、経営戦略論・組織論・マーケティング論に関する知識を判定します。
主な出題内容- Ⅰ 経営戦略論戦略の考え方(VRIO、コアコンピタンス)、企業戦略(ドメイン、多角化、PPM、M&A)、競争戦略(価値連鎖、競争優位、競争地位別戦略)、技術経営(MOT)、国際経営戦略、CSR・ガバナンス、ファミリービジネス
- Ⅱ 組織論組織構造の形態、組織文化、モチベーション・リーダーシップ、組織間関係、組織変革・組織学習、人的資源管理(労働関連法規、雇用管理、評価・処遇、人材育成)
- Ⅲ マーケティング論マーケティングの基礎概念、STPと4P、マーケティング・リサーチ、CRM・サービス/デジタル/グローバルマーケティング、ブランディング、消費者行動、プライシング、プロモーション、流通チャネル
科目 4
運営管理(オペレーション・マネジメント)
科目設置の目的中小企業経営において、工場や店舗における生産・販売の運営管理は大きな位置を占めます。近年は情報通信技術の進展により、情報システムを活用した効率的な事業運営へのコンサルティングニーズも高まっています。こうした観点から、生産に関わるオペレーション管理と、小売業・卸売業・サービス業のオペレーション管理に関する全般的な知識を判定します。
主な出題内容- Ⅰ 生産管理生産管理概論(PQCDSME)、生産システム(JIT・かんばん方式 等)、生産計画・生産統制、作業の管理(作業測定、ECRS、動作経済の原則)、設備管理(TPM、SLP)、物の管理(資材・在庫管理、EOQ、QC手法、TQM、ISO)
- Ⅱ 店舗・販売管理店舗・商業集積(都市計画法、大店立地法、商圏分析)、マーチャンダイジング(商品構成、売場レイアウト、VMD、価格設定)、商品補充・物流、流通情報システム(POS、商品コード、バーコード、トレーサビリティ)
科目 5
経営法務
科目設置の目的創業者・中小企業経営者に助言を行う際には、企業経営に関係する法律・諸制度・手続等の実務的な知識が必要です。より専門的な内容は、必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されるため、有資格者へ橋渡しできる最低限の実務知識が求められます。こうした観点から、企業経営に関する法務の基本的な知識を判定します。
主な出題内容- ⑴ 事業開始・会社設立・倒産等個人/法人の事業開始、会社の設立・登記、各種届出・手続、合併・営業譲渡、倒産手続(会社更生法、民事再生法 等)
- ⑵ 知的財産権産業財産権(特許・商標・意匠・実用新案)、著作権、ライセンス契約、知財に関する国際条約
- ⑶ 取引関係に関する法務知識契約の成立・有効要件、各種契約類型、英文契約、紛争解決方法(訴訟・仲裁・調停)
- ⑷ 企業活動に関する法律知識民法、会社法(会社の種類・株式・機関等)、金融商品取引法、独占禁止法、不正競争防止法、製造物責任法、消費者保護法、事業承継に関する法
- ⑸ 資本市場へのアクセスと手続資本市場の基礎知識、有価証券報告書とディスクロージャー、社債発行・株式公開手続
科目 6
経営情報システム
科目設置の目的情報通信技術の発展・普及により、経営のあらゆる場面で情報システムの活用が重要となり、ICTに関する知識が必要です。情報システムを経営戦略・企業革新と結びつけ、経営資源として効果的に活用できるよう助言するとともに、必要に応じて専門家へ橋渡しすることが想定されます。こうした観点から、経営情報システム全般の基礎的な知識を判定します。
主な出題内容- Ⅰ 情報通信技術に関する基礎的知識情報処理の基礎技術(ハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、開発手法)、情報処理システムと関連技術(クラウド、仮想化 等)、データベース、通信ネットワーク、システム評価
- Ⅱ 経営情報管理経営戦略と情報システム(情報システム戦略、ITガバナンス、内部統制)、情報システム開発(ウォーターフォール・アジャイル 等)、システムのマネジメント(プロジェクト管理、情報セキュリティ)、システム評価、意思決定支援(データ分析、データサイエンス、AI)
科目 7
中小企業経営・中小企業政策
科目設置の目的中小企業診断士は中小企業のコンサルタントとしての役割を期待され、中小企業経営の特徴を踏まえた診断・助言を行う必要があります。そのため、各種統計等から経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解し、大企業との相違や経営特質を把握することが求められます。また、創業・経営の助言では、国や地方自治体の各種政策を成長ステージや経営課題に合わせて活用することが有効です。こうした観点から、中小企業経営と中小企業政策全般の知識を判定します。
主な出題内容- ⑴ 中小企業経営経済・産業における中小企業の役割と位置づけ(各種統計にみる中小企業、中小企業の動向)、中小企業の経営特性と経営課題(経営指標、業種・業態別の特質、経営環境の変化、最近の動向)
- ⑵ 中小企業政策中小企業関連法規、中小企業政策の体系と内容(経営サポート、金融サポート、財務サポート、商業・地域サポート 等)、支援事業の実施体制、中小企業政策の役割と変遷
本ページの「科目設置の目的」「出題内容」は、一般社団法人 中小企業診断協会が公表する令和7年度(2025年度)第1次試験案内「13.試験科目設置の目的と内容」をもとに要約・整理したものです。解説部分は学習支援を目的に独自に作成しており、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。最新かつ正確な情報は必ず公式の試験案内をご確認ください。