事案の概要データ
| 公表日 | 2026年10月21日 |
|---|---|
| 痕跡の発見 | 2026年10月9日の総点検 |
| 遡って確認された痕跡 | 2025年7月頃 |
| 原因 | 運用に用いる認証情報を不正取得され、サービス運用環境へ侵入された |
| 対象サービス | i-FILTER@Cloud、m-FILTER@Cloud など(ソフトウェア版は対象外) |
| 被害 | クラウドサービス利用者の一部の情報を第三者が閲覧した可能性 |
| 件数・項目 | 非公表 |
| 対応 | 全利用者に、管理者・利用者双方のパスワード変更を依頼 |
図解:この事故の構造
- 2025年7月頃この時期に遡る不正アクセスの痕跡(後の調査で判明)
- ↓ 約1年3か月 気づかれず
- 2026年10月9日総点検により痕跡を発見
- ↓ 12日
- 2026年10月21日事案を公表。全利用者にパスワード変更を依頼
何が起きたのか
デジタルアーツは2026年10月21日、クラウドサービスの運用環境と社内環境への不正アクセスを公表しました。
原因は、運用に用いる認証情報を不正取得され、サービス運用環境へ侵入されたことです。2026年10月9日の総点検で痕跡を発見しましたが、調査の結果、2025年7月頃に遡る痕跡も確認されています。
対象はi-FILTER@Cloud、m-FILTER@Cloudなどのクラウドサービスで、ソフトウェア版は対象外です。クラウドサービス利用者の一部の情報を第三者が閲覧した可能性があるとされ、件数と具体的な項目は非公表です。
同社は全利用者に対し、管理者・利用者双方のパスワード変更を依頼しています。
1年以上気づかれなかった
2025年7月頃に遡る痕跡が確認されたということは、1年以上にわたって侵入されていた可能性があるということです。
2026年の事案でも、長期潜伏は繰り返されました。9月のさくらインターネット(販売管理システムへの侵入が2023年4月から約3年間)、4月の村田製作所(米国への届出では侵害が2025年3月、認識は2026年2月で約1年)です。
長期化する理由は、正規の認証情報が使われているからです。システムから見れば「いつもの運用作業」であり、異常として検知されません。
発見のきっかけが「総点検」だった点も重要です。日常の監視では気づかず、腰を据えた点検によって初めて見つかりました。定期的に過去のログを遡って調べる取り組みには、意味があります。
セキュリティ企業が被害を受けた
デジタルアーツは、Webフィルタリングやメールセキュリティの製品を提供する企業です。i-FILTERやm-FILTERは、学校や企業で広く使われています。
セキュリティ製品を提供する企業が侵害されると、影響は特別な意味を持ちます。その製品を使っている組織は、まさに守られているはずの立場だからです。
2026年10月5日の駿河屋の事案では、侵入経路が「監視ツールの脆弱性」でした。システムを見守るために入れていた道具が入口になっています。セキュリティのための仕組みほど、強い権限を持つため、破られたときの影響が大きくなります。
利用者としてできるのは、同社の案内どおりパスワードを変更すること、そして管理者アカウントのログイン履歴を確認することです。
「運用に用いる認証情報」
奪われたのは、サービスを運用するために使う認証情報でした。人が日常的に使うアカウントとは別の、運用・保守用のものです。
2026年10月は、この種の認証情報が狙われる事案が続きました。10月16日の日本経済新聞社(開発用クラウドの認証情報)、10月20日のNEC(委託先の正規アカウント)、10月21日のPingCAP Japan(サービスアカウント)です。
運用・保守用の認証情報は、強い権限を持ち、長期間変更されず、多要素認証もかけにくいという特徴があります。だから狙われます。
対策は、(1)運用用アカウントの一覧を作る、(2)定期的に認証情報を入れ替える、(3)普段と違う時間帯・場所からの利用を検知する、の3点です。
時系列で見る経過
- 2025年7月頃この時期に遡る不正アクセスの痕跡が、後の調査で確認される
- 2026年10月9日総点検により痕跡を発見
- 2026年10月調査により、2025年7月頃に遡る痕跡も確認
- 2026年10月21日事案を公表。全利用者に管理者・利用者双方のパスワード変更を依頼
中小企業が学ぶべきポイント
- 運用・保守用の認証情報は強い権限を持ち、長期間変更されない。だから狙われる。
- 正規の認証情報が使われると「いつもの作業」に見え、検知されない。
- 日常の監視では気づかないことがある。定期的に過去のログを遡る総点検を行う。
- セキュリティ製品の提供元が侵害されると、守られているはずの利用者に影響が及ぶ。
- 運用用アカウントの一覧を作り、定期的に認証情報を入れ替える。
出典・参考
本記事は、各組織の公表資料および報道をもとに、要点をわかりやすく整理したものです。 被害件数は「漏えいした可能性のある最大件数」として公表されている場合があり、実際に漏えいが確定した件数とは異なることがあります。 また、調査の進展により内容が変わる場合があります。正確な情報は必ず出典元の公式発表をご確認ください。