経営環境の転換期における中小企業の「稼ぐ力」の強化と、小規模事業者の「経営リテラシー」向上に向けた最新動向をまとめています。
中小企業の賃上げは日本経済の成長にとって極めて重要。2025年春季労使交渉では中小労働組合で4.65%の賃上げ率を記録。しかし、中小企業の労働分配率は既に約8割に達しており、更なる賃上げ余力には課題があります。
人口減少の進展により、既に深刻な人手不足がさらに悪化する見込み。2040年には中小企業の雇用者数が2018年比で約84%まで減少する可能性があります。建設業、情報通信業、運輸業で特に不足感が強い状況です。
デフレ・ゼロ金利の環境から、インフレ・金利のある時代へ移行中。金融機関の貸出金利が上昇し、円安トレンドが継続。多くの中小企業にとって厳しい経営環境が続いています。
付加価値額 = 労働投入量 × 労働生産性。労働供給制約社会が到来する中、付加価値額を維持・増加させるためには労働生産性の向上が不可欠です。
中小企業の中にも、大企業の中央値を超える労働生産性を実現している企業が一定数存在。規模が小さくても高い生産性は実現可能です。
生産能力の拡大や新事業への進出を目的とした設備投資。取り組んだ企業は付加価値額の増加率が22.0%(取り組んでいない企業は15.2%)。
短期的には効果を見出しにくいが、中長期的な付加価値額の増加に資する重要な取組。10年間で付加価値額は約19%増加。課題は人材面と費用面。
OJTとOFF-JTの両方に取り組む企業は、付加価値額の増加率が22.6%(どちらも未実施の企業は15.4%)。OFF-JT費用は増加傾向だが大企業との差は大きい。
コスト上昇分の適切な価格転嫁と、製品・サービスの差別化が重要。価格転嫁率75%以上の企業は付加価値額が21.1%増加。特定顧客への過度な依存を避けることも大切。
M&Aを実施した企業は付加価値額が22.8%増加。若い経営者(50代以下)への承継ほど効果が大きい。PMI(統合プロセス)が成功のカギ。
約3割の中小企業がAI活用に取り組み済み。バックオフィス部門で73.4%が活用中。社内研修やITツールの部門間連携がデジタル化の効果を高めます。
経営力を向上させるためには、経営者が持つべき基本的な知識「経営リテラシー」を4つの分野で強化・実践することが不可欠。現状、いずれの分野にも改善の余地があります。
原価管理:製品・サービス別に原価を把握している事業者ほど、価格転嫁に成功する傾向。取組率67.8%。
資金繰り計画:策定率はわずか24.6%。貸借対照表の活用は資金繰りに好影響。
労務管理:取組率70.5%。残業時間が減少すると従業員の定着率が高まる傾向。勤怠管理は約半数が「紙への手書き」。
組織活性化:取組率41.4%。取り組む企業は採用実績でも有利。
品質管理:取組率69.3%。取り組む企業は顧客数の増加や営業利益率の向上につながる傾向。
ノウハウの蓄積・共有:取組率48.8%。マニュアル整備が属人化防止に有効。
経営計画の策定:取組率はわずか19.9%。策定+PDCAで効果が大幅に高まる。策定企業の57.9%が売上増加。
マーケティング:取組率60.6%。差別化と外部環境分析に取り組む事業者は売上増加傾向。
企業単独で不足している経営力を補い合い、新製品開発やリソースの共有などにより事業の成長にもつながります。連携に取り組む企業は53.2%が売上増加(未実施企業は43.8%)。
| 連携の類型 | 内容 | 主な取組 |
|---|---|---|
| 協業・プロジェクト型 | 特定の目的のために複数企業が協力 | 新商品開発、地域フェア、コラボ商品 |
| 組合型 | 法律に基づく共同事業組織 | 商店街振興組合、共同仕入れ |
| 契約型 | 契約・覚書による協力関係 | 共同開発、業務提携 |
| 資本型 | 出資や合弁会社設立 | 共同出資による新会社設立 |
支援機関の課題として、支援ノウハウの蓄積(49.8%)や支援人材の確保(42.2%)が挙げられています。OJT・OFF-JTや他の支援機関と連携した勉強会が、支援人材の能力向上に有効です。
小規模事業者が支援を求める分野は「経営計画の策定と運用」が37.3%で最多。支援機関側も同分野の支援に79.6%が取り組んでおり、ニーズと供給は概ね一致しています。
年商の約2倍(10億円)を投じて新工場「OYAKI FARM」を開業。生産能力1.5倍、業務フロー見直しで効率化。体験型施設として差別化。
「風船会計」と名付けた社内塾で財務知識を教育。自社アプリ70種以上を開発し、検品業務のデジタル化で1,500時間削減。
OEM依存から脱却し、スポーツ向けソックスブランド「OLENO」を立ち上げ。五輪選手にも採用、海外輸出も実現。
生成AIでプログラムを作成し、30以上のアプリを搭載する情報統合管理システムを自社開発。多能工化・業務平準化も実現。
後継者不在の同業2社を買収。雇用継続を約束し、人的交流や共同調達を推進。受注の幅と生産キャパシティが拡大。
財務会計セミナーで知識を習得し、製品別原価を算出。約7割が赤字受注と判明し、利益率重視の顧客選定に転換。
2025年の倒産件数は10,300件で増加傾向。従業員10人未満の小規模企業が全体の約9割を占めます。業種別ではサービス業が33.8%と最多。
休廃業・解散件数は67,949件。黒字にもかかわらず休廃業する企業が49.1%を占め、経営者の高齢化(平均71.5歳)が背景にあります。
米国関税:全国約1,000か所の相談窓口に計8,751件の問い合わせ。輸出実施企業の55.8%が「受注減少」の影響を受けています。
脱炭素化:取引先から協力要請を受けた割合は15.8%に上昇(前年12.0%)。サイバーセキュリティ・技術情報管理強化を求められる企業も31.6%。
約15.4%の中小企業がまだデジタル化に未着手(段階1)。一方で27.3%が段階3以上に到達。約3割がAI活用に取り組んでおり、AIを活用しない理由の第1位は「活用する業務がイメージできていない(63.4%)」。
第1章:動向(業況、金利・為替・物価、雇用・賃金、労働生産性・設備投資、デジタル化・DX、価格転嫁、開業・倒産・休廃業、事業承継・M&A)
第2章:共通価値(脱炭素化・サーキュラーエコノミー・経済安全保障・人権尊重)
第3章:取組事例
第1章:労働生産性の状況 / 第2章:「稼ぐ力」強化の取組(付加価値額の増加、労働投入量の最適化) / 第3章:人材確保・活用
第1章:経営リテラシー向上と企業間連携(現状分析、財務・会計、組織・人材、運営管理、経営戦略、連携の在り方) / 第2章:支援機関の現状と支援力強化