毎月勤労統計調査 2026年3月速報

事業所規模5人以上 ― 賃金・労働時間・雇用の最新動向

2026年3月のポイント

厚生労働省が公表する毎月勤労統計調査は、日本の賃金・労働時間・雇用の動きを毎月把握できる重要な統計です。2026年3月速報の主要な数値をまとめました。

+2.7%
現金給与総額
前年同月比
+3.2%
所定内給与
前年同月比
+1.0%
実質賃金
前年同月比
317,254円
現金給与総額
(就業形態計)

産業別の現金給与総額(就業形態計)

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(事業所規模5人以上)

📊 このグラフのポイント

産業別の月間現金給与総額を比べると、業種間でかなりの差があることがわかります。

  • 最も高いのは「金融業,保険業」で約52.5万円、次いで「電気・ガス業」が約50.9万円と、いずれも50万円を超えています。
  • 一方、「飲食サービス業等」は約13.3万円と全産業で最も低く、パートタイム労働者の割合が約79%と高いことが主な要因です。
  • 「建設業」は前年比+9.6%と大幅に伸びており、人手不足を背景とした賃上げが進んでいると考えられます。

産業別の現金給与総額 前年同月比

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(事業所規模5人以上)

📊 このグラフのポイント

前年同月比を見ると、多くの産業で賃金が上昇している一方、一部の産業では減少しています。

  • 「建設業」が+9.6%で最も高い伸びを示しています。特別に支払われた給与(ボーナスなど)が前年比+39.1%と大幅増になったことが押し上げ要因とみられます。
  • 「金融業,保険業」も+7.6%と高い伸びで、所定内給与(+8.7%)が大きく寄与しています。
  • 「飲食サービス業等」は▲7.4%と大幅なマイナスとなっており、特別給与が▲61.8%と急落していることが影響しています。

名目賃金と実質賃金の前年比推移

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(付表より作成)

📊 このグラフのポイント

名目賃金(実際にもらう金額の伸び)と、物価上昇を差し引いた実質賃金の動きを月次で追ったグラフです。

  • 名目賃金(現金給与総額)の前年比は、2024年3月以降おおむね+1%〜+4%台で推移しており、賃上げの流れは続いています。
  • 実質賃金は2025年の大半でマイナスが続いていましたが、2026年1月に+1.0%とプラスに転じ、2月は+2.1%、3月も+1.3%とプラスを維持しています。
  • 実質賃金がプラスになったのは、消費者物価上昇率が鈍化(3月は+1.5%)してきたことが背景にあると考えられます。中小企業にとっても、従業員の生活水準が改善してきている兆しと言えます。

実質賃金の国際比較(前年同月比)

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(各国公表資料による)

📊 このグラフのポイント

主要先進国の実質賃金の動きを比較しています。

  • 日本の実質賃金は2022〜2025年にかけてマイナスが続く時期が多く、主要国の中で最も厳しい状況でした。
  • 2026年に入り、日本もプラス圏に浮上しています(1月+1.0%、2月+2.1%、3月+1.3%)。他国と比較してようやく回復の動きが見られます。
  • アメリカは安定的にプラス圏を維持しており、ドイツも2024年以降プラス基調です。日本の回復が持続するかが今後の注目点です。

産業別の月間総実労働時間(就業形態計)

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(事業所規模5人以上)

📊 このグラフのポイント

産業別の月間総実労働時間と、所定内・所定外の内訳です。

  • 全産業平均は132.7時間で、前年同月比ほぼ横ばい(0%)です。
  • 「鉱業,採石業等」(161.4時間)や「建設業」(159.5時間)が長く、「飲食サービス業等」(85.6時間)はパート比率の高さから短くなっています。
  • 所定外労働時間(残業)は全体で前年比▲3.0%と減少しており、働き方改革の影響が続いていると考えられます。特に「鉱業,採石業等」で▲19.6%と大きく減少しています。

パートタイム労働者の時間当たり給与の推移

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年3月速報(事業所規模5人以上)

📊 このグラフのポイント

パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与÷所定内労働時間)の推移です。

  • 2022年の1,242円から、2026年3月には1,431円まで上昇しています。4年間で約190円(+15%)の増加です。
  • 前年比は+3〜4%台で安定しており、最低賃金引上げの効果が反映されていると考えられます。
  • 中小企業にとっては人件費上昇のプレッシャーですが、人材確保のためには賃上げが不可欠な状況が続いています。

2026年3月の主要データ一覧

項目 就業形態計 一般労働者 パートタイム
現金給与総額317,254円413,495円112,621円
 前年比+2.7%+3.3%+1.4%
所定内給与271,313円348,563円107,061円
 前年比+3.2%+3.7%+2.0%
総実労働時間132.7時間158.9時間76.9時間
 前年比0.0%+0.8%▲2.0%
常用雇用者数51,445千人35,008千人16,437千人
 前年比+1.1%+0.6%+2.7%

まとめ

2026年3月の毎月勤労統計調査は、日本の労働市場が引き続き「賃上げ基調」にあることを示しています。名目賃金は前年比+2.7%と堅調で、所定内給与は+3.2%と、ベースアップの効果が浸透しつつあります。

注目すべきは、実質賃金が3か月連続でプラスを維持していることです。消費者物価上昇率が落ち着いてきたことで、名目の賃上げが「実質的な」購買力の回復につながり始めています。国際比較で見ても、日本はようやく他の先進国と同様のプラス圏に入ってきました。

中小企業にとっては、人件費上昇への対応が引き続き課題ですが、従業員の生活水準の改善は、人材定着や消費の回復を通じて、経営にもプラスに働く可能性があります。