出典:帝国データバンク「人手不足倒産/従業員退職型 倒産動向」ほか|中小企業診断士が解説
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人手不足倒産の動向レポート(2016〜2026年)

2025年は427件で3年連続の過去最多|「賃上げできず人材流出」型の倒産が急増

このレポートのポイント

従業員の離職・採用難・人件費高騰などによる「人手不足倒産」が、過去にないペースで増えています。 帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件。年間として初めて400件を超え、 3年連続で過去最多を更新しました。前年(342件)から+24.9%の急増です。

なかでも注目されるのが、ITmediaの記事でも取り上げられた 「従業員退職型」倒産(従業員や経営幹部の退職が引き金となった倒産)です。 2026年1〜7月で83件と前年同期(74件)を上回り、5年連続で増加。 コストアップを価格に転嫁できず賃上げの原資を確保できないまま、中核人材が流出する—— そんな「賃上げ難型」の倒産が中小企業を直撃しています。

人手不足倒産(2025年)
427
3年連続で過去最多
前年比(2024→2025年)
+24.9%
342件 → 427件
従業員退職型(26年1-7月)
83
前年同期74件・5年連続増
従業員10人未満の割合
77.0%
小規模企業に集中(2025年)

① 人手不足倒産の件数推移(2016〜2025年)

出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」(負債1000万円以上・法的整理)

📊 このグラフのポイント

人手不足倒産は、コロナ禍の資金繰り支援で一時的に減少(2020〜2021年)した後、 支援終了と物価高・人手不足の深刻化を背景に急増しています。 2022年の140件から、2023年260件 → 2024年342件 → 2025年427件とわずか3年で約3倍になりました。

  • 2019年(192件)が当時の過去最多でしたが、2023年以降はそれを大きく上回る水準に。
  • コロナ支援という「下駄」が外れ、人手不足という構造的な要因が前面に出てきたことを示します。
  • 倒産は景気の遅行指標。人手不足はこの先も続くため、当面は高水準が続くと見込まれます。

②「従業員退職型」倒産の推移(2013〜2025年、2026年は1-7月)

出典:帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」(負債1000万円以上・法的整理)

📊 このグラフのポイント

記事で話題の「従業員退職型」は、採用できないだけでなく 今いる人が辞めてしまうことで事業が回らなくなる倒産です。 2025年は124件で初めて年100件を突破。2026年は1〜7月だけで83件(オレンジの棒)に達し、 年間で過去最多の更新が確実視されています。

  • 少人数の企業では、キーマン1人の退職が事業停止に直結します。
  • 「待遇改善(賃上げ)をしないことによる人材流出リスク」が数字にはっきり表れています。
  • 採用難対策だけでなく、今いる人材の定着(リテンション)が経営の生命線になっています。

③ 業種別の人手不足倒産(2025年)

出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」

📊 このグラフのポイント

労働集約型の業種に倒産が集中しています。特に建設業(113件)は初めて100件を超え物流業(52件)は過去最多。2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された、 いわゆる「2024年問題」の両業種が目立ちます。

  • 建設・物流に加え、老人福祉・労働者派遣・美容・警備など、人が事業の中心となる業種が並びます。
  • これらは価格転嫁が難しく、賃上げ原資を確保しづらい業種でもあります。
  • 自社が該当する業種は、同業の倒産動向を「先行指標」としてウォッチする価値があります。

なぜ人手不足倒産は増えているのか

背景には、いくつかの要因が重なっています。

実際の倒産事例

東海サービス(貨物運送)

名古屋市/2026年5月 破産

受注競争の激化と燃料費高騰で収益が圧迫。ドライバーの賃上げを進められず、退職が相次いで事業継続が困難に。

五十嵐建設(内装工事)

茨城県水戸市/2025年12月 破産

中核メンバーの独立・退職で人手不足が深刻化。業績も悪化し赤字に陥り、事業継続を断念。

出典:帝国データバンク/ITmedia ビジネスオンライン

中小企業がとるべき対策(中小企業診断士の視点)

「採用を頑張る」だけでは追いつきません。辞めさせない(定着)少人数でも回る仕組みの両輪が重要です。

  1. 1価格転嫁と賃上げをセットで:値上げ交渉・価格改定を進め、賃上げの原資を確保する。転嫁できない下請取引は「価格交渉促進月間」等も活用。
  2. 2キーマン依存からの脱却:業務の見える化・マニュアル化・多能工化で、1人が抜けても止まらない体制に。属人化の棚卸しから。
  3. 3退職の予兆を早期に察知:定期的な1on1や満足度調査で不満を早めに把握。「辞めてから」では手遅れ。
  4. 4省人化・DX/AXへの投資:受発注・シフト・請求などの定型業務を自動化し、少人数でも回る生産性を確保(IT導入補助金・省力化投資補助金の活用)。
  5. 5非金銭的な魅力づくり:柔軟な働き方・評価の納得感・成長機会など、賃金以外の「選ばれる理由」を整える。

📝 データの出典・注記

  • データ元:株式会社帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」(2026年1月8日発表)、「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月7日発表)ほか。
  • 集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産。集計期間は2013年1月以降。
  • 人手不足倒産:従業員の離職・採用難・人件費高騰などを要因とする倒産。従業員退職型はそのうち、従業員・経営幹部の退職が事業継続困難の要因となった倒産。
  • きっかけ記事:ITmedia ビジネスオンライン「『退職』が原因の倒産、5年連続増加 賃上げできず人材流出が企業を直撃」(2026年8月12日)。
  • 本レポートの数値は各発表時点のもので、グラフは当サイトが作成しました。分析・コメントは筆者(村上知也)の見解です。