消費者物価指数と小売物価統計調査は
何が違う?

身近な商品の「実際の価格(円)」と「指数(2020年=100)」で比べてみた(2015〜2025年・東京都区部&全国)

このレポートでわかること

ニュースでよく耳にする「消費者物価指数(CPI)が前年より○%上がりました」。 この消費者物価指数と、その土台になっている小売物価統計調査は、 じつは「親子」のような関係にあります。名前は似ていますが、役割がはっきり違います。

このページでは、食パン・鶏卵・キャベツ・豆腐・ガソリン・お米という身近な6商品を例に、 「実際にいくらだったのか(円)」と「2020年を100とした指数」を並べて、 2つの統計の違いと関係を、グラフを見ながらやさしく確認していきます。

まず結論から
小売物価統計調査=お店で「実際の値段(円)」を調べる調査。家計の実感に近い“生の価格”。
消費者物価指数(CPI)=その価格データを主な材料にして計算した“物価のものさし(指数)”。
つまり、小売物価統計調査で集めた価格が、消費者物価指数の原材料になっているのです。

2つの統計のちがい早見表

小売物価統計調査
(動向編)
消費者物価指数
(CPI)
ひとことで お店の値段を測る「ものさしの目盛りを作る調査」 その目盛りで測った「物価の温度計」
何を出すか 実際の価格(円)
例:食パン1kg = 535円
指数(2020年=100)
例:食パン = 126.8
単位 円・銭など(お金) 数値(基準年=100、単位なし)
主な使いみち 価格の実態把握、地域差の比較、CPIの計算材料 物価の変化率(インフレ率)、年金・賃金・契約の改定基準
集計の単位 都市別が基本(都道府県庁所在市など) 全国・地域・都市階級など
作っているところ 総務省統計局 総務省統計局(同じ)
関係 小売物価統計調査で集めた「価格」→ 加工・品質調整・重みづけ → 消費者物価指数(CPI)

ポイントは「指数(CPI)は、価格(小売物価統計)から作られている」という上下関係です。 だから両者は別々の数字に見えて、動き方はとてもよく似ています。以下のグラフで実際に確かめてみましょう。

① 小売物価統計調査でみる「実際の価格(円)」

まずは“生の値段”から。東京都区部での身近な5商品の年平均価格(円)の推移です。 「1個いくら?」「1kgいくら?」という、家計に直結する実感の数字です。

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出典:総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」調査品目の年平均価格(東京都区部)/e-Stat

📊 このグラフのポイント

いずれの商品も2020年ごろまでは横ばい〜ゆるやかでしたが、2022年以降にはっきりと上向いています。 原材料・エネルギー価格の上昇と円安が、身近な食品にまで波及したことが読み取れます。

  • 食パン(1kg)は2020年の440円前後から2025年は530円台へ。ガソリン(1L)も136円台から178円前後へ上昇。
  • キャベツ・鶏卵は天候や鳥インフルエンザなどで年ごとの振れ(ギザギザ)が大きいのが特徴です。
  • この「円」の数字こそ、次に見る消費者物価指数(CPI)の“原材料”になっています。

② 消費者物価指数でみる「指数(2020年=100)」

同じ商品を、今度は消費者物価指数(全国・2020年=100)で見てみます。 金額ではなく「2020年から何%変わったか」がひと目でわかるのが指数の便利なところです。

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出典:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数」品目別指数(全国)/e-Stat

📊 このグラフのポイント

すべて2020年に「100」でそろってスタートするため、値段の大小に関係なく“上がり方”を横並びで比較できます。 これが実価格(円)のグラフとの一番の違いです。

  • お米(うるち米B)は2024〜2025年に指数が急上昇し、100→200超え。いわゆる「令和の米騒動」がくっきり表れています。
  • 食パンは指数126前後、鶏卵・キャベツは130〜140台と、多くの品目で「2020年比で3〜4割高」に。
  • 単位が「円」ではなく「指数」なので、値段の水準がまったく違う商品どうしでも“上昇率”を公平に比べられます。

③ 同じ商品を「円」と「指数」で重ねると?(お米の例)

では、同じ商品の「実価格(円)」と「消費者物価指数」を1つのグラフに重ねるとどうなるでしょう。 話題のお米を例に、左軸=実価格(円)、右軸=CPI指数で描いてみました。

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出典:小売物価統計調査(東京都区部・うるち米)+消費者物価指数(全国・うるち米B)/e-Stat

📊 このグラフのポイント

2本の線はほとんど同じ形で動いています。実価格(円)が上がれば指数も上がり、下がれば下がる。 これは「指数(CPI)が価格(小売物価統計)から作られている」ことの何よりの証拠です。

  • お米は2024〜2025年に価格・指数ともに急騰。実価格は2,200円台から4,700円台へと約2倍になりました。
  • 片方は「円」、もう片方は「単位なしの指数」ですが、上下の動き(増減率)はぴったり連動します。
  • 指数の便利さは、この“動き”だけを取り出して、他の商品や過去と比較しやすくしている点にあります。

④ それでも“少しズレる”のはなぜ?(実価格指数 vs 公式CPI)

最後に、小売物価統計の実価格を自分で「2020年=100」に計算しなおし(=実価格指数)、 公式の消費者物価指数と重ねてみます。ほぼ重なりますが、よく見ると少しだけズレます。 そのズレにこそ、2つの統計の性格の違いが表れています。

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出典:小売物価統計調査(東京都区部)を2020年=100に指数化/消費者物価指数(全国)/e-Stat

📊 このグラフのポイント

食パンと鶏卵について、「東京都区部の実価格を指数化した線(点線)」と「公式CPI(実線)」を比べています。 方向は同じでも、線は完全には重なりません。おもなズレの理由は次のとおりです。

  • 対象エリアの違い:実価格は東京都区部、公式CPIは全国平均。地域差ぶんズレます。
  • 品質調整:CPIは内容量やグレードの変化を補正します(例:量が減れば実質値上げとみなす)。
  • 銘柄・集計方法:CPIは代表的な複数銘柄を決まったルールで統合するため、単純平均の実価格とは差が出ます。
  • それでも大きな流れは一致。「価格」と「指数」は同じ調査データを源にした別の見せ方だとわかります。

まとめ:使い分けのコツ