IPA データ分析リポート

DX動向2025(データ集)完全解説

日本、米国、ドイツの比較から読み解く日本の課題と処方箋

公開日: 2025年6月26日 / 発行: 独立行政法人情報処理推進機構

1. 全体サマリー:日本の現在地

日本におけるDXの「取組」自体は米国と同等水準(全社的な取組:約34.4%)まで進展していますが、その「成果」の面で大きな格差が生じています。

  • 成果創出の壁: 成果が出ている企業の割合は、米国(87.0%)、ドイツ(81.7%)に対し、日本は57.8%に留まる。
  • 「守り」から抜け出せない: 日本はコスト削減や効率化(守りのDX)には強いが、新規事業創出やビジネスモデル変革(攻めのDX)で顕著に遅れている。
  • 人材と文化の課題: 人材不足感は8割を超え、リスクを許容しない企業文化が足かせとなっている。

2. DXの取組と成果の状況

国別の取組状況(2024年度)

日本(全社的取組)34.4%
米国(全社的取組)34.6%
ドイツ(全社的取組)26.4%

※取組の広がりは日米でほぼ並んでいる。

経営面の成果内容(日本 vs 米国)

  • 日本 コスト削減(71.1%)が最大。次いで製品提供日数削減。
  • 米国 利益増加(65.6%)、売上高増加(65.0%)が中心。

日本は「効率化」、米国は「バリューアップ」に成果が集中している。

成果がわからない理由(日本)

日本の回答で特徴的なのは、DXの成果を把握できていない企業の多さです。

1位:成果の評価はこれから進める予定 (33.4%)

2位:成果目標を定めていない (21.9%)

目的設定とKPIの不在が、DXを「なんとなくの取組」に留めています。

3. ガバナンス・組織・企業文化

経営層のリーダーシップと見識

CDO(最高デジタル責任者)の設置

11.7%

米国(50.5%)、ドイツ(42.6%)と大差。

経営層・IT・業務部門の協調

7.4%

「十分にできている」とする割合。米国は32.2%。

企業文化・風土の「できている」割合

項目 日本 米国
リスクを取り、チャレンジすることが尊重される24.8%53.2%
意思決定のスピードが速い35.0%51.1%
多様な価値観を受容する31.4%53.7%
職位・部門間での情報共有が円滑25.0%57.0%

4. 技術利活用:AIと生成AIの衝撃

生成AIの導入状況

前向きな取組(導入済み・試験利用・検討中)を行っている企業の割合:

日本
約5割
米国
約8割
ドイツ
約7割

生成AI利用の課題(日本)

  • 効果やリスクに関する理解不足 (48.6%)
  • 適切な利用ルールの作成が困難 (37.8%)
  • 誤った回答を信じて業務利用する懸念 (40.5%)

開発体制の内製化

「コア事業における内製開発」の回答率:

  • 日本28.2%
  • 米国48.5%

日本は外部委託(37.8%)への依存が依然として強い。

5. DXを推進する人材

人材の「量」の確保状況:日本の深刻な不足

85.1%

DX推進人材が「不足」している企業の割合(日本)

不足している人材類型としては、「ビジネスアーキテクト」が最も多く、次いで「データサイエンティスト」が挙げられています。米国・ドイツではデータサイエンティストの不足が目立つ一方、日本は「変革をリードする構想役(ビジネスアーキテクト)」がボトルネックになっています。

人材育成の課題と対策

【課題:日本特有】

「育成の支援はしていない(個人に任せている)」が36.6%と突出して高い(米国は1.0%)。

【不足の理由】

「魅力的な処遇が提示できない」「募集しても応募が少ない」が他国に比べて顕著。

日本のDX加速に向けた提言

1. 目的の再定義

単なる「コスト削減」から、顧客価値を高める「バリューアップ」へ舵を切る。成果目標とKPIを明確にする。

2. 企業文化の変革

経営層が自らデジタルへの見識を深め(リスキリング)、失敗を許容し、迅速に意思決定する風土を醸成する。

3. 組織的な人材投資

個人の自律に任せるだけでなく、企業としてスキルを定義し、処遇の改善と育成プログラムへの継続的な投資を行う。